柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

硬くならない団子

地元の花見に出店していた和菓子屋で、じゅうねん味噌が塗られた団子を夫に買ってもらった。

 

じゅうねん味噌が甘めなのは分かっていたけど、食べてみると、団子そのものも甘い。これならじゅうねん味噌を塗らずとも、そのままでおいしい気がする。

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硬くなり始めた団子が食べたい

端午の節句には別の和菓子屋の柏餅を買った。これもまたあんこだけでなく餅そのものも甘い。包丁で三等分に切って、あんこが詰まった真ん中部分を夫にあげて、端っこの餅部分を私が食べた。

 

最近の和菓子の餅は、時間が経っても硬くならないように砂糖が練り込まれているらしい。母は硬くなり始めた団子が好きなのだけど、「最近の団子は砂糖が入っているからいつまでも軟らかい」と残念がっていた。私も硬めの団子が好きなので、とても共感する。

 

子どものころ、実家近くの駅前に「都まんじゅう」というまんじゅう屋があった。店内でまんじゅうを焼く様子が外から見えるのも楽しい。カステラ風の生地に白あんが詰まっているまんじゅうで、私も私の家族も翌日に硬くなり始めた冷たい都まんじゅうを食べるのが好きだった。

 

今でも変わらず「都まんじゅう」は製造を続けているのは嬉しいけど、都まんじゅうはいつからか生地に砂糖を練り込み始めたようだ。その証拠に、昔のように翌日になっても生地が硬くならない。

 

メディアを中心に「あまーい」「やわらかーい」が褒め言葉のように使われているけど、「あますぎない」「かたい」の魅力もあるのに。砂糖が練り込まれた軟らかい餅に出会うたび、「お前もか!」と残念な気持ちになる。

 

ほかほかごはん

先日、バーで1日限定の「たまごかけごはん祭」なるイベントを開き、お客さんに土鍋で炊いたごはんでたまごかけごはんを提供した。
 
そこで、ごはんの提供時間の難しさを改めて思い知った。おむすび屋をやっていたときとは勝手が違う。
 
大きな炊飯器で一気に炊いてしまうと保温中にごはんの味が落ちてしまう。今回のイベントのように土鍋でちょこちょこ炊いても、時間が経つとごはんが冷めてしまう。
 
冷めたごはんがおいしい場合もあるけど、私はたまごかけごはんはほかほかごはんで食べたい。
 
というわけで、今回は5合炊きの土鍋で3合ずつこまめに何度も何度も炊いた。
 
時にはお客さんに炊きあがりを待ってもらった。「待ち時間もおいしさ」と言って待ってくださった優しいお客さんたちに感謝。

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たまごかけごはんは、ほかほかごはんに卵を割り落として醤油をかけてかきこみたい

食べ手のことを考えてベストな料理を提供することは大変だけど、それでもできる限り食べ手が満足できるものを提供したい。

 
私は学校給食の白ごはんが苦痛だった。業者炊飯の大きな容器で届くのだけど、水蒸気でふたについた水がぼたぼたとごはんの上に落ち、ごはんは炊きムラがひどくて、ところどころドロリと溶けている。しかも、脇には牛乳。小学校のときは、食べ切ることができず、下校時間まで食べさせられたこともあった。ドロリとしたごはんと牛乳の組み合わせの気持ち悪さで吐いたこともあった。
 
先日、ある料理家さんのお弁当を食べた女の子が「保育園の給食のごはんは苦いけど、このごはんはおいしい」と言って、残さずぺろりと食べたそうだ。子どもは味覚が敏感。子どもたちにこそ、おいしい米を、おいしく炊いた、おいしいごはんを食べてもらいたい。

茶色はおいしい

先日の新聞に全国学力・学習調査で出された問題と回答が載っていた。

 

国語が好きだったので、出題を流し読みしていたら、「全国中学生新聞」から引用したという「海外に広がる弁当の魅力」という記事が取り上げられていた。

 

「弁当箱の一番の魅力は、小さな箱の中にいろいろな料理が詰められていることです。主食、主菜、副菜、時には果物までがきれいに収まっています」

 

「トマトの赤色や卵焼きの黄色などをうまく並べて、鮮やかな彩りになるように工夫された弁当を見て、『まるで宝石箱のようだ』と言う海外の方もいます」

 

弁当箱が「宝石箱」って素敵な表現だなあと思うけど、私はカラフルなお弁当よりも、煮物とかきんぴらごぼうとか佃煮とか味噌漬けなどが入った茶色い弁当のほうが好きだ(茶色い肉は食べられないけど)。

 

子どものころ、お弁当に1粒だけ入っているプチトマトは生温くておいしくないなあといつも思っていた。それが「彩りのため」「隙間を埋めるため」だったことを大人になってから知った。

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茶色いおかずの中で私のベスト3に入る「きんぴらごぼう」

「茶色い食べものはおいしい」と信じている。インバウンド向けの料理は多くの場合が華やかだったり、ザ・日本的なものだったり、インパクト重視になりがち。でも、日本の弁当はそれだけじゃない。「宝石箱」だけじゃない弁当の魅力も知ってもらいたい。

溶けた冷凍みかん

冬に知り合いの米農家さんから自然栽培みかんをダンボール1箱いただいた。

 

夫と食べたり、人におすそ分けしたりしていたけど、早く食べないと傷んでしまう。

 

どうしよう…と思っていたら、みかんをくれた農家さんが「皮をむかずにそのまま冷凍しておくと田植えの時のおやつにいいよ」と教えてくれたので、20個ほど入れてみた。

 

先日、冷凍みかんを1個出して、常温に少し置いてからふにゃっとしてきた皮を剥いて、食べてみた。

 

シャリシャリしておいしい。知らなかった。小学校の給食で出た冷凍みかんはこんな食感ではなく、ただの冷たいみかんだった。

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冷凍みかんはただの冷たいみかんだと思っていたので、父がキヨスクで冷凍みかんを買っても私は食べなかった

 給食で冷凍みかんが出てきたら、最初に冷凍みかんを食べる子どもはほとんどいない。誰だって「デザートだな」と思う。私も周囲の子もみんな食後のデザートとして冷凍みかんを食べていた。

 

季節ははっきり覚えていないけど、暑かったような気がする。すると、食べるころには冷凍みかんはすでに溶けていて、ただの冷たいみかんになっている。給食の献立を考えた人はこのことを分かっていたのだろうか。はたまた、暑い季節に冷たいフルーツをという心使いだったのだろうか。いずれにしても、私は「冷凍みかん」を長きにわたって誤解することになった。

 

ちなみに、揚げパンが出るときは、いつもスライスチーズがセットで出てきた。スライスチーズのフィルムで揚げパンを巻いて、手が油と砂糖で汚れないようにして食べるという趣向らしい。

 

普通のパンに野菜と挟んでサンドイッチ的に食べるでもなく、揚げパンの場合はスライスチーズの行き場がない(たとえ挟もうと思っても、パンに切り目がないので挟めない)。そういうわけで、みんなスライスチーズはそのまま食べていた。ただ単に、揚げパンで手が汚れないために出されただけのスライスチーズなのだ。

 

そもそも揚げパンはどんなおかずにも合わないと断言できる。揚げパンに合うおかずがあったら誰か教えてほしい。

 

給食は「栄養バランス」は考えられているようだけど、食べ合わせとか提供温度までは考えられていない場合が多いように感じる。自校給食ではなくセンター給食の学校も多いので提供温度は仕方ないとして、食べ合わせは重要だ。

 

ある方が「子どものころに給食で揚げパンと五目煮が出て以来、五目煮が嫌いになってしまった」と言っていた。白ごはんならば五目煮との相性は良いのに、なぜわざわざ揚げパンにするのか、どうしても分からない。

 

献立作りは栄養素の数字ばかりを見るのではなく、食べ手のことをもっと想像してほしい。献立を考える人だって、レストランで「本日の定食」のデザートに、溶けた冷凍みかんが出て来たり、揚げパンとスライスチーズが出て来たり、揚げパンと五目煮が出て来たら、あまりうれしくないのではないだろうか。

平成最後のカレーコロッケ

「平成最後の日の夕食はコロッケにしよう」と思っていたら、前日にコロッケが食べたくなってしまい、フライングしてコロッケを作った。

 

いつもはタマネギとジャガイモのコロッケだけど、今回はカレー粉も混ぜてカレーコロッケにしてみた。

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パン粉に黒胡椒を挽いて混ぜてみたらなかなか良かった。いつも揚げる直前まで私が作り、揚げるのはわが家の揚げ物大臣(夫)

食べた瞬間、思わず「なつかしい」という言葉が口をついて出た。小学生のころに近所の祖父母の家でカレーコロッケを食べた記憶が急によみがえった。そんなこと、記憶の片隅にもなかったはずなのに。

 

父方の祖父母の家は文房具屋兼本屋だった。父は三男だったけど、長男と二男の嫁が店番を手伝わないので、嫁に来た私の母は毎日店番をすることになった。当時は土曜日も小学校があり、午前だけで終わる「半ドン」。平日は授業が終わると自宅に帰っていたけど、土曜日は母が店番中なので、小学校から店に行き、そこで昼食をとっていた。

 

祖父母もおじもおばも母もみんな店番や配達で忙しいので、昼食は商店街で買った惣菜。買って来た薄っぺらいカレーコロッケに、醤油だったか、ウスターソースだったか、さらっとした液状の調味料をかけて食べていた記憶がある。

 

思えば、祖父母の家で食べたものはどれも「なつかしいおいしさ」が詰まっている。

 

ポテトサラダ(ポテサラ)に醤油をかけて食べるのも、この昼食で覚えた。これはいまだにやめられない。ポテサラに醤油をかけると立派なおかずになるので、「ポテサラ定食」があってもいいと思っている。

 

少し余裕があるときは、素麺を茹でてくれた。冷たいそうめんを、作り立ての温かいつゆにつけて食べる。これが好きで、私はいまだに家で素麺を食べるときは、温かいつゆを作ってしまう。

 

カレーコロッケをひとくち食べただけで、今は閉店してしまった祖父母の店で漫画をタダ読みしていたことや、亡き祖母が好きだった菓子、さらには小学校でのできごとなど、祖父母の店でカレーコロッケを食べていた時代のありとあらゆる思い出が芋づる式によみがえってくる。

 

明日から新元号。秋には赤子が生まれいづる。家族3人でどんな味の思い出が増えていくのだろうか。

 

ちなみに、私はポテサラに醤油をかけるけど、夫は何もかけない。私はカレーコロッケに醤油をかけるけど、夫はソースをかける。赤子が大きくなったときに「ポテサラとカレーコロッケには醤油だよね!」と言うだろうか。はたまた、「醤油をかけるなんて邪道!」と言われるだろうか。

主役はだれか

大盛りライスと濃いカレー」で、「日本のごはんの消費量が減っている要因の一つは、おかずの味付けの薄さにある」と、健康志向による減塩の影響について書いた。

 

加えて、最近になって「おいしくないごはんは塩分を増やす」ということにも気づいた。

 

炊飯実験で古米を食べた。粘土のような香りがしてつらかった。普段は白ごはんだけでも箸が進むけど、この時はおかずを食べる量が増え、使う醤油の量が増えた。そうでないと、ごはんを食べ進められなかった。

 

つまり、

 

「塩分が多いおかず」⇒「ごはんの消費が増える」

 

「おいしくないごはん」⇒「塩分の摂取が増える」

 

ということだ。

 

ならば、

 

「おいしいごはん」⇒「塩分の摂取は減る」

 

ということなのだけど、以前にも書いたように、

 

「塩分の摂取が減る」⇒「ごはんの消費が減る」

 

ということにもなるのではないだろうか。

 

でも、ごはんがおいしいのだから、ごはんの消費は増えるだろう。でも、塩味がないと、いくらなんでも白ごはんだけで何杯も食べないよなあ。ならば、おいしいごはんに味の濃いおかずをぶっかければいいのか。でも、それでは塩分を避ける人がごはんをあまり食べないよなあ……などなど、無限ループに陥った。

 

そんなとき、やはり梅干しとか佃煮とか漬物とか、塩味が強いけどちょっとだけつまんで白ごはんをかき込めるシンプルな「ごはんのおとも」は、ごはんとの相性が最強だと改めて実感した。

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梅干し1粒でごはん1杯

 最近の「ごはんのおともランキング」などを見ると、「松坂牛大トロフレーク」とか「かけるピリ辛ラー油」とか「老舗料亭のビーフカレー」とか「とろける煮豚」などがあるけど、それって「ごはんのおとも」ではなく「ごはんのおかず」ではないだろうか。

 

「ごはんのおとも」はあくまで「ごはんの味を楽しめる」もの。「桃太郎」の主人公は「おとも」のサルやキジではないように、「ごはんのおとも」も主人公は「おとも」ではなく、ごはん。おいしいごはんの消費をアップさせるポテンシャルたっぷりの「ごはんのおとも」を改めて見直してみたい。

サプリと鼻血

かつての私はいろいろなものが足りなかった。

 

鉄分がたりない、白血球がたりない、赤血球がたりない、血小板がたりない、コレステロールがたりない、血圧がたりない…。ひどいときは健康診断で12項目において足りないものがあった。

 

新聞社に入社したばかりのころは血圧が40〜70で、警察担当、いわゆるサツ回りをしていた私は、警察の方から「生きてるか?」「食ってるか?」とよく声をかけてもらっていた。

 

その後、さまざまな数値は回復したものの、あいかわらず、低血圧で鉄欠乏性貧血だった。

 

ところが、妊娠が発覚してから「妊婦は鉄分不足になりやすい」と知った。もともと鉄分が足りてないのでまずいなあと思い、食品で摂取するように心掛けてはみたものの、それだけでは心もとない。なぜなら、コマツナや納豆などはもともと食べている。もっと鉄分をとらなければならない。

 

それでも、サプリメントには手を出したくない。食べものを栄養として見ることがあまり好きではない。栄養バランスはたしかに大切だけど、わたしは栄養バランスのために食べているわけではなく、おいしいから食べているということを大切にしたい。

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食べものは栄養じゃなくておいしさで選びたい

 とは言え、自分のポリシーで子どもに迷惑をかけることはできない。血流が悪いと子どもはお腹の中で苦しくなってしまうと知り、子どものためにも鉄分をとろうと考え、一生懸命さがしにさがして、無添加物でオーガニックでナチュラルなサプリメントを飲み始めた。飲むと鉄の味がする。ザ・鉄分。

 

ところが、サプリを飲んでから1カ月以上もずっと鼻血が止まらない。だらだら出るのではなく、鼻をかむと血が出たり、お風呂に入ると血がたらりと出たり。

 

鼻血が出るときは、サプリを飲んだときと同じ鉄の風味がする。もしかしたら、人によって体内での鉄分の保有可能量は違うのかもしれない。

 

サプリで飲んだ鉄分はすべて鼻血で出てしまっているのではなかろうか…と思いながらも今日もサプリを飲み、鼻血が止まらない。