柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

2018-01-01から1年間の記事一覧

大晦日の晩ごはん

2日前からちょこちょこと準備をしてきたおかげで31日の朝にはおせち料理作りが完了した。ランチは夫と一緒に近所の定食屋へ。“ケの玉子丼”を食べ納めた。 玉子丼たべおさめ 大晦日の夜は夫の実家へ。私は自分の母がいつも作っていた煮しめ、ユリネの梅肉和え…

まずは餅を放置する

「餅なし正月」について調べてみると、その理由はさまざまだが、ある論文の証言の中に「先祖が餅をのどに詰まらせたから」という理由も載っていた。餅をのどに詰まらせるなんてそう簡単にはないと思っていたけど、「おじいちゃんがのどに詰まらせて危なかっ…

イスラム文化から世界のお米へ

今年は日本のお米の他に、スペインとタイのお米も取材した。 2年前にヨルダンで糸のような長粒米に出会い、トルコの日本料理店で鮨シャリの食べ比べをしたり野菜としてお米が使われている料理に出会ったりしてから、異文化のお米取材のおもしろさに目覚めた…

モチなし正月

鏡餅をこしらえたときにお父ちゃんから余った餅をもらった。さっそく「つゆ餅」と「納豆餅」を作って食べた。 納豆もち これで来年1月15日まで餅は食べ納めらしい。なぜなら、福島県会津地方の嫁ぎ先では正月に餅を食べない。お雑煮は地方によってさまざ…

プラスチックじゃない鏡餅

年の瀬の27日、夫のお父ちゃんとお母ちゃんと一緒に鏡餅をつくった。 神奈川県の実家に住んでいたころは鏡餅といえばプラスチックのパックに入ったもの買って飾っていた。でも、あのプラスチックの質感がどうも好きになれず、東京で一人暮らしをしていたと…

クリスマスはシャケ

昨日のブログで書いた「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」は、クリスマスイブの前日に友人の家でたまたま見たアニメ。「ギャングラー怪人サモーン・シャケキスタンチン」が「日本人ならシャケを食えー」と言いながら、街中の肉屋を脅して…

クリスマスっぽいもの

実家で暮らしていたころ、肉も乳製品もダメな私は、家族がチキンの丸焼きやケーキを楽しむ中、1人でごはんとみそ汁を食べていた。のけ者にされていたというわけではなく、ごはんとみそ汁が食べたかっただけ。母はワガママな私のために味噌汁や煮物などわざ…

「知ったかぶり」ならぬ「知らなかったぶり」

「既知の未知化」という言葉を聞いたことがある。知っているけど、無意識に知らないふりをしていること。 最近、自分がお米について取材している時のICレコーダーを聞いて、自分の既知の未知化に落ち込むことがある。 たとえば、お米について私が知っている…

エビ丼と玉子丼

近所の定食屋の品書きには、「エビ天丼」の横に「エビ丼」と書かれている。 エビ天丼はエビの天ぷらが乗っている丼だとすぐに分かるけど、エビ丼って何だろう。 注文してみると、その正体は、エビフライを玉子とじにした丼。厚めの衣がサクサク、中のエビが…

「あの」里芋のみそ汁

先日、稲に詳しい農学者の佐藤洋一郎さんを取材させていただいたときに、「おいしさとは何か」という話になった。 その中で「おいしさとはナラティブ」という佐藤さんの言葉が印象に残った。「ナラティブ」とは英語圏で「語り」という意味。「近年は『糖度何…

うな重の「松竹梅」問題

うなぎ屋でうな重を食べるとき、「松」「竹」「梅」のどれにしようか、いつも悩む。 何が違うのかと言えば、鰻の大きさ(量)と価格。「梅」の下に「椿」、「松」の上に「蘭」があったり、「松」の上に「特」があったりと、店によってさまざま。ちなみに、う…

ハムエッグの「ハム」抜き

玉子丼が好き。定食屋に行くと必ずと言っていいほど玉子丼を食べる。肉が苦手なので、親子丼しかない店では「親子丼の『親』抜きできますか」と聞くと、「子丼」を作ってくれる店もある。以前に仕事で地方に行った時に、地元の地鶏をウリにしている店で、地…

京都のきつねとたぬき

以前にも「わかめきつねうどん」で書いたが、きつねうどんが苦手だ。 お揚げが甘い。おいなりさんもお揚げが甘すぎるのは苦手だけど、おいなりさんのお揚げは薄いし、酢飯が甘さを少しは中和してくれる(酢飯が甘くなければ)。でも、きつねうどんのお揚げは…

衝撃のおから煮

海外のお米取材で難しいのが、1度そのお米料理を食べただけで、その国のお米料理はこうだとは言いきれないこと。たまたまその店のお米料理がそうだっただけかもしれない。だから、なるべく同じお米料理を別の店でも食べる。スペインではいったい何種類のパ…

酒米「祝」を食べる

京都には「祝」という酒米がある。1933年に当時の京都府立農事研究場丹後分場で生まれた古い品種で、兵庫県の「野条穂」から純系選抜という手法で生まれた。「祝」を使った日本酒は少なく、「祝」を飲みたいし「祝」を食べてみたいと思っていた。 すると、偶…

梅宮大社の「神代穂」

夫が神代穂について調べていた。ネットで発見した論文によると、神代穂はいずれも「ジャポニカうるち」。しかし、京都市右京区の「梅宮大社」の神代穂だけが「インディカうるち」と書いてある。もしかしたら「大唐米」かなあと思ったけど、玄米の色は「淡黄…

稲オタクに聞く!「マイ品種」の作り方

いま私たちが食べているお米のほとんどは、国や県の研究所で開発された品種です。しかし、歴史をさかのぼると、明治時代までは農家が品種を作る「民間育種」が当たり前でした。では、個人農家が育種して“マイ品種”を生み出すにはどうしたらいいのでしょう? …

新嘗祭は「亀の尾」三昧

今年の新嘗祭は夫が無農薬無肥料で栽培している「亀の尾」という品種を堪能した。 「亀の尾」の白ごはん。「亀の尾」の酒粕鍋。「亀の尾」の日本酒。 つちや農園「亀の尾」(有機JAS 無農薬・無肥料) 「亀の尾」の説明は、以前に書いた「Forbes JAPAN」のコ…

“鼻ちょうちん”が知らせるおいしいごはん

おいしいお米は、おいしく炊いて味わいたい! でも、お米のポテンシャルをしっかりと引き出して炊飯するためには、コツや道具が大事。そこで、東京・新橋にある日本料理店「懐石 高野」店主の高野正義(たかの・まさよし)さんは、誰でもしっかりと炊き上げ…

稲刈り後の田んぼにたたずむ“農民藝術”

かつて日本では稲刈りの時期になると、田んぼに稲を干す風景が見られました。その形は地域によって違い、呼び方も「稲干し」「ハサ掛け」「ハザ掛け」「サデ掛け」「ほんにょ」など、さまざま。稲刈りと乾燥作業が機械化された現代ではその風景を見ることは…

甘じょっぱすぎるおむすび

京都駅で祇園「なかがわ」の「おにぎり朝一番」を発見。近江米コシヒカリ。「鰆の西京焼」と「山椒ちりめん」。朝一番と言われたら思わず朝ごはんで食べたくなり購入。紙経木を開くと、あまりの昆布の量に目を見張った。 白飯おむすびがあと2個くらいほしい…

米粉パンに思うこと

「米粉パン」は日本ならではのパンなのかなあと思っていたら、「かつてのラオスのバゲットにも米粉が混ざっていた」と、稲に詳しい農学者の佐藤洋一郎さんが教えてくれた。日本はうるち米の粉だけど、ラオスは糯米の粉。ラオスの糯米粉バゲットはもっちりと…

お米が主役! おむすびは具材に合わせてお米を選ぶ?

「おむすびに合うお米」とは言いますが、ひとくちにおむすびと言っても、その具材はさまざま。シャケ、おかか、明太子、ツナマヨ。梅は、軟らかい梅干しなのか、硬めのカリカリ梅なのか。具材が変われば、合うお米も変わってきます。そこで、「五ツ星お米マ…

2000年前の「めし炊き」を探るお米屋

「炊飯」という調理技術のルーツを探り続けている長坂潔曉(ながさか・きよあき)さんは、考古学者でもなければ民俗学者でもない、街のお米屋さん。再現された弥生時代の土器で米を煮炊きするプロジェクトに参画するなど、実践を重ねながら炊飯技術の歴史と…

「どの米が一番おいしい?」が愚問なワケ【後編】

仕事は稲作、趣味は稲作、特技は稲作。静岡県藤枝市の “稲オタク”、もとい米農家・松下明弘(まつした・あきひろ)さん(写真左)は、巨大胚芽米「カミアカリ」の生みの親。個人農家の品種登録は全国でもめずらしい事例です。巨大胚芽であるがゆえ、玄米で食…

「どの米が一番おいしい?」が愚問なワケ【前編】

仕事は稲作、趣味は稲作、特技は稲作。静岡県藤枝市の “稲オタク”、もとい米農家・松下明弘(まつした・あきひろ)さんは、巨大胚芽米「カミアカリ」の生みの親。個人農家の品種登録は全国でもめずらしい事例です。巨大胚芽であるがゆえ、玄米で食べることを…

大きな視点を持ちながら目の前の食卓を見る  

パンやパスタなど輸入小麦による主食の多様化によって日本の米食文化が揺らぐ中、私たちがこれからの日本の米食文化、これからの米農業を考える上で、大切にしたいことは何だろうか。 それを示唆してくれていると思うのが、首都圏を中心に国内43店舗、海外…

甘い梅干しでごはんを食べる方法

梅干しと言えば、かつては酸っぱいものが当たり前でしたが、スーパーなどでは、ハチミツや糖類が入った甘めの梅干しのほうが多く見かけられるようになりました。でも、お米ライター柏木は、甘めの梅干しではごはんが進みません。一方で、同じように甘めでも…

レッテル貼りはもったいない

「南魚沼産コシヒカリ」と聞くだけで「いい米」「高い米」というイメージを抱く人は多い。一方で、「安い米」というイメージがついている品種もある。 静岡県藤枝市の米農家・松下明弘さんの「あさひの夢」は、1キロ720円で地元の米屋に並んでいる。それを見…

お米を売りながら地域の魅力を売る

「地方創生」の掛け声のもと、各地には地域おこしを絡めた商品開発事例がたくさんある。その中でも注目しているのは、六次化商品の中でもユニークなお米「能登輪島米物語」。石川県輪島市の9軒の米農家たちによる商品開発プロジェクトから生まれた。 能登輪…