柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

お米の好み 多様化の兆し?

11月、山形県庄内町で開かれた「第11回あなたが選ぶ日本一おいしい米コンテスト」に決勝一般審査員として参加した。

 

1日に46種類ものお米を食べられる…なんという幸せ。白いごはんだけ食べ続けると、しょっぱいものが欲しくなるけど、味覚が変わってしまわないように審査中はごはん以外の食べものはがまん。飲み物は水だけ。

 

審査米だけでもお腹がはち切れそうなのに、「森田早生」という昔品種の試食にも思わず飛びついてしまう。苦しい。うまく炊けていなかったので味は今ひとつだったけど、「森田早生の田んぼは白っぽい」という地元の方の言葉が強烈に印象に残った。森田早生のおいしさを引き出す食べ方をぜひ探ってみたい。

 

コンテストでは食味計を一切使わず、審査員が食べて「おいしい」と感じた品種が選ばれる。炊き具合はもちろん審査員の好みに結果が左右されてしまうので、インパクトのある品種が選ばれがち。

 

でも、高校生部門で低アミロースや大粒の品種を抑えて最優秀金賞に選ばれたのは、地元で約120年前に生まれた品種「亀の尾」だった。

 

日本酒に使われることが多く、地元での作付けもほぼお酒用。亀の尾は酒米だと思い込んでいる人は多い。でも実は、旨みと甘さをじわりと感じられる味わい深いうるち米

 

高校生の快挙をきっかけに食べるお米としての作付けが増えてくるかも。インパクト一辺倒時代から、嗜好の多様化の兆しを感じた。

日本農業新聞コラム「柏木智帆のライスワークはライフワーク」)