柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

田んぼで完成するブレンド米

一般的にブレンド米は、収穫してから2品種以上のお米を混ぜたもの。一方で、田植えの時から多品種を混ぜて育てているお米もある。

 

東京・吉祥寺の「金井米穀店」では、ユニークな“ブレンド米”の栽培を栃木県・塩谷町の「杉山ファーム」にお願いしている。なんと一枚の田んぼで、コシヒカリ、なすひかり、夢ごこちの3種類を1列ずつ交互に栽培しているのだ。その名も「杉三反」。都内の米屋2軒で全量買い取りしている。

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(金井米穀店提供)

 店主の金井一浩さんによると、競い合わせることで倒伏に強い茎に育つと言う。「台風で他の田んぼの稲は倒れていても、杉三反だけは倒れなかったり、隣の田んぼのコシヒカリよりも茎がちょっと太くなったりと、発見がある」。刈り取り時期のズレはないのかという疑問があったが、「出穂はなすひかりが早く、夢ごこちが遅く、コシヒカリは中間くらいだけど、意外に刈り取りは同じくらいになる」そうだ。

 

この3品種を店でブレンドするよりも、田んぼで“ブレンド”したほうが「1つの品種を食べている感覚になる」と金井さん。つまり、3品種がうまい具合になじむのだといい、得意先の飲食店からも「田んぼで混ぜたものでないとだめ」と言われるそう。

 

同じ“ブレンド”でも、田んぼで混ぜるお米はその年の出来によって味を調整するブレンド米とは違い、まるで1つの品種のような立ち位置。米農家が自身で新品種を育種するのは「ハードルが高い」という人もいるが、なるほど、こうした混植ならばオリジナル米を手軽に開発できる。

日本農業新聞コラム「柏木智帆のライフワークはライスワーク」)