柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

お米の魅力は文化とセットで

駅弁は日本独自の文化だと思っていたら、なんと台湾にも駅弁があるそうだ。どんな弁当か気になり、昨年秋に台北へ食べに行ってきた。

 

日本の駅弁と違うのは、弁当を温かいうちに食べること。台湾人は、ごはんが冷たいとひもじく感じるそうだ。冷めた弁当やおむすびを当たり前に食べる日本とは、ごはんに対する感覚が違う。

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「池上木片弁當」の弁当。おいしかった。

 そして、台湾の駅弁はごはんの上におかずが乗っている。日本の幕の内弁当のようにごはんとおかずが分かれているものは、どの駅弁屋にもなかった。海外の米取材も細々と続けていると、お米を食べる国でも日本のように白いごはんに何もかけずに食べる文化はないことに気づく。おかずを食べ、ごはんを食べ、口中調味する文化は、日本特有なのだ。

 

「日本米はおかずをかけなくてもおいしい。冷めてもおいしい」と言う人もいるが、日本人にとっての「おいしい米」と外国人にとっての「おいしい米」の感覚は必ずしも同じではないし、台湾で日本の魚沼コシヒカリ的な立ち位置となっている「池上米」を炊飯してみたら、日本人の私が食べてもおいしかった。お米の味の違いというよりも、やはり文化の違いなのだろう。

 

外食産業を中心に日本への輸入米が増えてきている中、日本の田んぼを守るためにも、世界における日本の米食文化の独自性や、日本米の立ち位置は知っておきたい。

 

日本米の消費を国内外で増やしていくためには、お米の魅力だけではなく、日本の米食文化の魅力も打ち出していくことが必要だ。

日本農業新聞コラム「柏木智帆のライフワークはライスワーク」)