柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

天かす丼

外食では他人が何をどういう組み合わせで注文して食べるのか、とても気になる。ついつい周りのテーブルを見渡してしまう。

 

特にホテルの朝食バイキングは興味深い。海外では現地の人の朝食スタイルを知るのが単純に楽しいけど、日本では他人のごはんの量が気になる。ごはんを一粒も食べない人もいれば、おかずの量に比べるとあまりにも少ない量のごはんを食べる人もいれば、クロワッサンをおかずに白ごはんを食べる「クロワッサン定食」というツワモノもいる。ごはんをおかわりしている人を見ると、うれしくなる。

 

先日、丸亀製麺というチェーンうどん店でかけうどん(並)を食べつつ、他人が食べているものをチラチラのぞき見していたら、学生らしき男子が何かの丼を食べていた。その正体がすぐにわからなかったけど、少し経って気づいた。それは、ごはんに天かすを乗せた丼だった。

 

この店では会計後にネギや天かすやおろし生姜などを無料にてセルフでうどんに乗せられるシステムなのだけど、彼はかけうどんを頼まずに白ごはんだけをオーダーして、無料の天かすをどっさりと乗せていたのだ。

 

かけうどん(並)は290円。白ごはんは130円。たとえば、300円でかけうどんは1食しか食べられないけど、天かす丼ならば2食を食べられる。節約のためなのか、あるいは、そこまで天かすが好きなのか、彼が天かす丼を生み出した理由はよくわからないけど、クリエイティブな姿勢に心の中で拍手した。

 

ちなみに、以前に閉店直前の夜の定食屋で「ごはんが売り切れで麺類しかない」と言われたとき、夫はかけうどんと麻婆豆腐の肉抜きをオーダー。かけうどんの上に麻婆豆腐を乗せて「麻婆豆腐うどん」なるメニューを生み出していた。別の日には、スパゲティナポリタンのハム抜きと白ごはんをオーダーして「ナポリタン定食」。また別の定食屋では、焼きそばの肉抜きと白ごはんをオーダーして「焼きそば定食」なるメニューを生み出していた。夫が食べているものを見た男性客が「あれと同じの」とオーダーしているのがおかしかった。

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「ナポリタン定食」。ハム抜きにしたら具が皆無。ハムだけのナポリタンらしい。

この定食屋で夫の友人はカツカレーのカツをエビフライに変えてほしいとお願いして、「エビフライカレー」なるものも生み出していたという。これを単なるワガママと見るか、食へのこだわりと見るか。もしかしたら店の人にとってはメイワクかもしれないけど、自分がおいしいと思うものを食べたいと思う気持ちはとてもよく分かる。

 

店が客においしいものを提供しようとするのはもちろんとして、客の食への貪欲さから出てきた発想によって新たなおいしさが生まれる瞬間はちょっと感動する。以前にある定食屋に行ったら、壁を埋め尽くすほど大量の品書きが貼られていた。店主いわく、「お客さんの要望に応えていったらどんどんメニューが増えていった」そうだ。こういうお店にはいろいろな人の「おいしい」が詰まっていて、とても素敵だと思う。