福島県会津地方には「天ぷらまんじゅう」という食べものがある。
薄皮まんじゅうに衣をつけて揚げたもので、関東でも「揚げまんじゅう」という名前で見たことがある。長野県出身の母も「学生時代に駅前の揚げまんじゅう屋さんで買って食べた揚げたてがおいしかった」と懐かしそうに言う。
というわけで天ぷらまんじゅう自体になじみはあったけど、驚いたのは夫が揚げまんじゅうをかけ蕎麦に入れて食べていたこと。「うちのばあさまもこうしてた」と夫。たしかに、天ぷらまんじゅうがメニューにある蕎麦屋もある。まんじゅうの小豆餡の甘さと、ツユのしょっぱさが絶妙にマッチするらしい。
この組み合わせに馴染んでいたからだろうか、夫は以前にホテルの朝食ビュッフェで驚愕の組み合わせの食事を楽しんでいた。
デザートを取りに行って戻ってきた夫の手には、チョコレートケーキと、なぜか味噌汁。交互に食べながら「絶妙に合う。これはすごい。発見だ」などと繰り返していた。きっとお汁粉を食べる時に漬物が添えられているイメージなんだろうと想像したら、ちょっと違うらしい。「チョコレートケーキにサンドされているラズベリーソースの甘酸っぱさがキモ」だそうだ。スウェーデンでミートボールを食べるときにジャムが添えられているイメージなのかもしれない(食べたことないけど)。むずかしい。
先日、「胎児のはなし」(増崎英明、最相葉月共著・ミシマ社)を読んだ。そこには、「父親のDNAが胎児を介して母親にも入っていることが最近になってわかりました」と書いてあった。もしかして、つわりって私の味覚や嗜好に夫の味覚や嗜好も混じってくることで起こるのだろうかなどと考えてみたりもした。
チョコレートケーキと味噌汁の組み合わせは永遠に理解できそうもないけど、もしかしたら、かけ蕎麦に天ぷら饅頭を入れて食べてみたら意外においしいと感じるかもしれない。