柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

めし泥棒になりたい

近所に住むリカさんの発案で、リカさん家でポットラックランチ会をした。つまりおかずをそれぞれ持ち寄ってみんなで食べようという会。

 

テーマは「ごはんに合うおかず」。私は塩むすびの他にきんぴらごぼうを持参。参加した4人がそれぞれ1、2品持ち寄るだけで豪華になる。食卓には、卵焼き、大根とツナの和風サラダ、メヒカリやサバなどの干物、豆腐の塩漬けといったおかずたちがずらりと並んだ。

 

このポットラック会が終わった後、ちょっとした変化が生まれた。

 

今までわが家の定番となっていたきんぴらごぼう。満足していたけど、もっとごはんが進むためにはどうすれば良いだろうか…と考えるようになった。

 

そして、きんぴらごぼうを炒める胡麻油を変えたり、みりんを減らしてみたり、糸こんにゃくを入れたりと試行錯誤し始めた。

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じつはポットラック会の数日前にも、思い立ってきんぴらごぼうのごぼうと人参の切り方を変えてみたり、白胡麻を黒胡麻に変えてみたりもしていた。

 

他にも、以前は甘酒で甘みを足していた胡麻和えは、醤油麹を伸ばして和えてみたほうがごはんが進むことを発見した。

高野豆腐の含め煮は好きだけどごはんが特別進むわけでもないなあと思い、みじん切りしてそぼろを作ってみたらごはんが進むことも発見した。

 

漫然と作っていた日々の料理。しかし、家族以外の誰かに食べてもらうということでブラッシュアップしようという気持ちになり、さらに少しでもごはんが進むおかずをこれまで以上に探し始めた。

 

これまでは炊飯ばかりを考えて実験していたけど、ごはんをごはんだけで食べる人はほぼいない。必ずおかずとごはんを一緒に食べる。ならばいかにごはんが進むおかずを生み出すかも重要だ(炊飯はもちろん重要で奥深くて果てしなく研究が続く)。

頭ではわかっていたつもりだったけど、ポットラックのおかげでより確信した。そして、自分の料理を改めて客観的に見るようになった。

 

リカさんの生活も変わっていた。リカさんは朝食を作るタイプではなかったが、ポットラック後には朝食時に人参とタラコを炒めていたと聞いて興奮した。ポットラックが生活を変える。ポットラックで普段の料理のモチベーションが上がる。これはすごい。

 

リカさんの場合は「ポットラックが楽しかっただけで普段の料理を頑張れる」そうだ。ポットラックの楽しい体験が普段の料理をポジティブな印象に変えた。

私の場合は「めし泥棒」と言われるためにはどうすればいいのかをひたすら追究している。

いずれにしても、普段の料理に対する意識が変わったのは間違いない。

 

一方で強調したいのは、ポットラックは料理が苦手な人でも参加できるということ。たとえば、おいしい干物を持ってきたり、おすすめの焼き海苔を持ってきたり、大好きな佃煮を持ってきたり。ポットラックはそれぞれの普段の「おいしい」を共有する場なのだ。

 

ちなみに、私は興奮して夫に話した。ポットラック会で食べたもの、ポットラックによってそれぞれの意識が変わったこと、そして次回以降はメインテーマが引き続き「ごはんに合うおかず」でサブテーマが「塩麹を使ったおかず」とか「わが家のきんぴらごぼう」とか「わが家の卵焼き」とか、会ごとに変えていこうとリカさんと話したこと。

 

すると、夫は「うちのばあさまと同じだ」と笑った。「ばあさまは近所のばあさまたちと自慢の漬物を持ち寄って同じように食べていた」そうだ。

 

まさかおばあちゃんもポットラック会を開いていたとは。いつの時代も、楽しいものは楽しいし、おいしいものはおいしい。