柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

夫にとっての飴

以前にあるお宅でミネストローネをすすめられた。肉と乳製品が食べられないので、こういう時はドキッとする。

 

高い確率でベーコンが入っているだろうと思い、「肉が食べられないので…」とやんわりとお断りすると、ベーコンは入っていないから大丈夫よとおっしゃる。それでもまだ安心できず、おそらく乳製品はミネストローネに入っていないだろうと思いつつも、念のため乳製品もダメだと伝えた。

 

すると、マーガリンは大丈夫かと聞かれたので、マーガリンもダメです、と答えた。乳製品や肉でなくても、マーガリンや擬製肉(大豆)は味が乳っぽかったり肉っぽいので苦手だ。

 

そんなやりとりをした後に目の前に置かれたミネストローネ。スプーンですくって口元に近づけると、ほんのりとマーガリンのような匂いがしたのでスプーンを止めた。スプーンでさっとかき混ぜると、まだ溶け切れていないマーガリンの塊が出てきた。同時に、一緒にいた女性が耳元でこそっと「どうせ気づかないだろうから入れちゃえってキッチンで言ってました。無理して食べなくていいですよ」と教えてくれた。衝撃を受けた。

 

おそらくミネストローネにマーガリンを入れた人は、食べ物の好き嫌いがあまりないのかもしれない。「何でも食べないとダメよ!」と言う人は、食べ物の好き嫌いがなく、悪意なく、そう言う(場合が多い)。

食べ物の好き嫌いがなぜワガママに見られたり軽んじられてしまったりするのか、ふに落ちない。味覚の感じ方は人それぞれだし育った環境も人それぞれなのだから、すべての人があらゆるものを食べられるわけではないと思う。そして食べ物の好き嫌いをフードロスや貧困問題に結び付けて非難する人もいるけど、そこは分けて考えることだろう。

 

他人の食べ物の好き嫌いを理解しているつもりでも、理解しきれないところはある。でもそれは批判することではなく、他人の食べ物の好き嫌いを尊重しようとする気持ちが大事なのだと思う。

幸いにして、夫と私は似たような食嗜好があるため、相手の食のこだわりへの尊重や理解が自然とお互いにできている。

 

でも、1つだけ、夫にこの辛さが伝わってるかなあと思うことがあった。

 

私は日本酒が大好きで、以前は毎日晩酌していた。しかし、妊娠発覚から禁酒し、産後も授乳のため今もなお禁酒が続いている。もう1年5ヶ月もお酒を飲んでいない。ノンアルコールのヴェリタスブロイというビールを箱買いしてたまに飲んでいるけど、物足りない。

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しかし、お酒を飲んで酔ったときのだるさが嫌いな夫は「ヴェリタスブロイおいしい。むしろビールよりもこれがいい」と言う。そんなわけで、私がお酒を飲めないことに対して夫は「お酒好きだから辛いよね」と言ってくれていたけど、本当に辛いことがいまいち伝わっていないようにも感じていた。もちろん理解しろとは言わないけど、あまりにも辛いので知ってほしい気持ちになってしまった。

 

夫はお酒はそこまで好きではないが、アイスやチョコや饅頭など甘いものが大好きだ。

しかし、夫曰く「甘いものが食べたい時に『飴しかない』と言われたら『飴はいいや』って断る」らしい。

「飴は甘いのになんでダメなの?」と聞くと、「『飴は甘いじゃないか』と言うのは『甘いものほしい時は砂糖を舐めればいいじゃん』と言っているのと同じ」だそうだ。

 

そこで、「お酒が飲めずにノンアルコールビールしか飲めない状況は、甘いものが飴しか舐められない状況のようなものだ」と伝えると、「それは辛い…!飴だけは辛すぎるだろう…!」と相当なダメージを感じていた。

 

夫にとっての飴の存在のどうでも良さを知り、飴に同情しながらも、ようやくお酒を飲めない辛さが伝わったことに満足した。