柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

おべんとうばこのうた・その2

以前に書いた「おべんとうばこの歌」で、「♪おむすびおむすびちょいと詰めて」が「♪サンドイッチサンドイッチちょいと詰めて」に変わっているという衝撃の事態について書いた。

「♪刻み生姜にごま塩かけて」の部分は、「♪からしバターにマヨネーズ塗って」に変わっているとのことだったが、先日このことを取り上げていたテレビ番組(NHK総合「所さん!大変ですよ)では、「♪からしバターに粉チーズふって」になっていた。

 

「♪筋の通ったふーき」が「♪筋の通ったベーコン」になっているのは同じだったが、そもそも筋の通ったベーコンって何だ。ベーコンの作り方を調べてみると、筋切りという工程がある。筋の通ったベーコンはそもそもおいしくないんじゃないだろうか。

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番組ではこの改変の理由について、「刻み生姜」や「ふき」が「馴染みのない食材だからだそうだ」と紹介していた。

われわれが子どもの頃は「おべんとうばこの歌」を喜んで歌っていたし、刻み生姜もふきも「そういう食べ物があるんだなあ」くらいに思っていたはず。そして、成長していずれは歌詞と食材が結びつく。

そもそも子どもの「馴染みある食べもの」を作り上げているのは大人だ。大人がサンドイッチやベーコンを与えていればサンドイッチやベーコンが馴染みある食べものになる。

たしかに刻み生姜は刺激があり、ふきは香りが強い。苦手な子のほうが圧倒的だと思う。だからと言って、歌詞をまるごと変えてまで、子どもを取り巻く世界のすべてを子どもの「馴染みあるもの」にすべきなのだろうか。馴染まないものを知る機会を奪ってしまうのはあまりにつまらない。

 

番組では、他にも「♪ハンバーグにエビフライ/ミートボール/やきにく/ケチャップかかったスパゲティ/とても甘いメロン」という歌詞も紹介していた(どのメロディーに当てはまるのかわからなかったが、おそらく「♪刻み生姜に」以降の歌詞か)。

スーパーヘビーで大人でも胃もたれしそうな組み合わせだが、どこかで見たことがあるなあと思ったら「お子様ランチ」だった。

 

お子様ランチを作っているのは大人だ。「子どもが喜ぶから」という理由はあまりにも子どもの味覚や健康、食文化を無視した刹那的で無責任な言葉だと思う。

 

改変した「おべんとうばこの歌」を大人が子どもに教えている状況下で、「食育」という言葉はあまりにも薄っぺらい。今では「食育」は「なんとなく良さそうな雰囲気を醸し出す便利な言葉」として使い倒され、名ばかり食育が蔓延しているように思う。