柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

糀甘酒と酒粕甘酒は似て非なり

3歳の娘は甘酒が大好き。

私も甘酒は好きだが、好きなのは糀甘酒にかぎる。酒粕甘酒はどうも好きになれない。

日本酒は大好きで、粕汁や鮭の酒粕煮などの酒粕料理も好き。酒粕を炙って酒の肴にするのも好き。それでも酒粕甘酒は好きになれない。

酒粕甘酒は酒粕の風味が強いこともあるが、好きになれない最大の理由は「そもそも砂糖を使わずとも発酵時に生まれるアミラーゼのおかげで甘くなるにもかかわらず、なぜわざわざ砂糖を足すのか」という小さな不満があるからだ。

先日、娘と一緒に酒蔵併設の喫茶店へ行った。目的は酒蔵の甘酒。娘と一緒に甘酒を注文すると、店員から「甘さ控えめなのでガムシロップもお持ちしますか?」と妙なことを聞かれた。

ガムシロップを断り、しばし待ち、甘酒が到着。飲んでみると、たしかにかなり甘さが控えめ。自宅で娘に飲ませている「糀甘酒1:水5」で薄めた甘酒に近い控えめな甘さ。そして、酒粕の風味の強さに、これは酒粕甘酒では?と気づいた。

すぐにネット検索すると、その酒蔵で販売されている商品は酒粕甘酒であった。

麹を扱う酒蔵でなぜ…という疑問と、もろみを搾るときにたくさんできる酒粕の使い道ではあるよな…という納得と、でもあの酒蔵の甘酒は糀甘酒だったのに…という不満と、いろいろな思いが渦巻いた。

f:id:chihoism0:20220826095202j:image

私は酒粕甘酒を半分しか飲めず、娘はいつもよりかなり時間をかけながらも飲み干した。

糀甘酒と酒粕甘酒は同じ甘酒でもまったくの別物。しかしながら、いずれも主原料はお米であるし、カニカニカマの関係のように酒粕甘酒が糀甘酒のイミテーションと言うつもりはない(カニカマはもはやイミテーションではなく市民権を得ているという声もあるが)。

一方で、「酒粕甘酒に郷愁を感じる」という酒粕甘酒ファンもいるのだから、ひとくくりに「甘酒」にしてしまうことは糀甘酒ファンにとっても酒粕甘酒ファンにとっても不幸なことだと思うのだがどうだろう。