柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

自分のお米を食べ続けて80年

昨年に引き続き「西会津一うまい米コンテスト」の審査員として西会津町へ。

審査させていただいたのはコシヒカリ部門で、ノミネート米は5種類。西会津町のコシヒカリはあいかわらずどれもツヤッツヤ。そして、やわらかくて、粘りが強い。

全体的に猛暑と渇水に見舞われた昨年よりも良かったが、やはり食感には出穂後の高温の影響が感じられた。味と食感のバランスで迷いながらも今年は比較的わかりやすかった。

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今年は米食味分析鑑定コンクール国際大会でもノミネート&受賞経験多数の生産者・三瓶鐵江さんも審査員に加わっていらっしゃった。

西会津町のコンテストでは昨年殿堂入りして「西会津町米作りの巨匠」になられたので、もう西会津のコンテストでは三瓶さんのお米が食べられないのかと残念に思っていたが、初めてお目にかかれて嬉しいかぎり。

講評で三瓶さんが「人のお米を食べるのは初めて」とおっしゃっているのを聞いてなぜか感激してしまった。お歳は80代前半とのこと。子どものころはおそらくご家族が作ったお米を食べ、青年になった三瓶さんがお米を作るようになってからはご自身で作ったお米を食べていたのだろう。80年以上にわたる食生活の中で他人のお米を食べるのが初めてということが、なんだか不思議と尊く感じられた(家庭の炊飯ではということだと思うけど)。

前々から、生産者が他の生産者のお米を食べずにいては食味を上げるモチベーションが生まれにくいのではと思っていたが、おいしいお米を作り続けておられる三瓶さんが他の生産者のお米を食べたことがないとは、いろいろな生産者さんがいるんだなあと新鮮な気持ちになった。

そして、三瓶さんはめちゃくちゃお米のベロメーターのレベルが高いのではとも思った。「自分の米を基準に選んで、自分の米よりも上だと思う米が2つあったのでそれを選んだ」とおっしゃっていたので、終了後に三瓶さんにどれを選んだのか聞きに行った。他の審査員がどれを選んだのか聞くとまた学びになる。