巨大胚芽米カミアカリの可能性を生み出す目的で開かれている勉強会「カミアカリドリーム」のスピンアウト勉強会「ごみばことめがね」2回目は、東北大学名誉教授・笹野高嗣さんを講師にお招きして、福島県会津若松市「ヒューマンハブ天寧寺倉庫」で開催した。
テーマは「おいしさとは何か」。
福島県・静岡県・新潟県・東京都・神奈川県・岩手県・長野県・宮城県の1都7県から計32名にご参加いただいた。
お米のコンクールの審査を務める中で、毎回のようにお米のおいしさって何だろうと感じてきた。そんなとき、以前に「マイナビ農業」の記事で取材させていただいた笹野さんのことを思い出し、今回の講師をお願いした。
https://agri.mynavi.jp/2019_03_12_62258/
おいしさはどのような物質をどこでどのように感じているかというお話や、内臓の感覚・気分・感情・記憶などによる味の変調のほか、味だと思っていた感覚は味覚ではなく触覚であるなど、味覚はおいしさの一部に過ぎないということをさまざまな方向から学ぶことができた。やはり記事にも書いたようにおいしさは総合感覚なのだ。
おそらく多くの参加者が衝撃を受けたのは、私たちの身体もグルタミン酸を作っているということ。そして、個人的には味の受容が味蕾だけでないということがまさに自分の感覚と合っていたことに興奮して、もう身を乗り出して講演を拝聴した。
笹野さんの「『おいしさって何?』は『幸せって何?』と同じ質問」という言葉は名言だった。幸せのかたちは人それぞれであるとともに移り行くものであるのと同じように、おいしさも人それぞれであるとともに移り行くものなのだ。
味覚は生まれつきの感覚もありながら、子どものころや大人になってからの食経験なども影響する。つまり、生きて食べていれば常に味覚は学習して変化しているものなのだと知ると、1回1回の食事との向き合い方が変わってくる。
個人的には、コンクール審査後にいつもわいてくるもやもやの正体がようやく見えた。
いろいろな種類のもやもやがあるけど、そのうちの一つは、なぜこの結果になったのかがわからないもやもやだった。
笹野さんのご講演によって「おいしさ」というものは想定以上に不安定なものであることがわかり、コンクール審査員の誰もが評価中の気分や体調などで「おいしさ」が変わることが前提なのだと思えば、「おいしさの評価」ではなく「米質の評価」を重視すべきだと改めて感じる。
そして、審査員同士でそれぞれが開始前に選定方針を公開し合い、終了後に選定理由の公開をし合うことも必要なのかもしれない。主観で選ぶからこそ、選定方針や選定理由を言語化して客観視することは大切だと感じる。生産者もなぜこの審査結果なのかわからないままでは、納得がいかないのではないだろうか。
ちなみに、カミアカリはなぜ今までにないお米の食感なのに多くの人に受け入れられたのかという問いに対する自分なりの推測もできた。
笹野さんは医療者以外へのご講演が初めてだったそうで少し心配されていたそうだけど、非常にわかりやすいご講演で、参加者からは質問時間にはおさまらないほどたくさんの興味深い質問が出た。大充実の講演会といっても過言ではないような。
夜の懇親会は会津若松市、東山温泉の「いろりの宿 芦名」。先日の大雪で被害を受けて営業停止中という大変な状況の中、受け入れていただいた。
営業停止中にもかかわらず囲炉裏で焼く岩魚、厚揚げ、地鶏をご用意いただき、あとは買い出し&日本酒持ち寄りという囲炉裏バーベキュー。これはこれで楽しかった。
懇親会で披露された南伊豆町の生産者・ガン見師匠の落語、生地屋葉っぱと梅屋スパイスのキュートなお囃子が最高でした。
2回目だというのに至らない点が多々あり反省点もあるけど、サポートくださった静岡県「安東米店」 長坂 潔曉 さんに心より感謝申し上げます。 松下 明弘さんをはじめ、カミアカリドリーム運営メンバーの方々、ご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。ごみばことめがねのロゴにご協力くださったBACCOdesignさま、ありがとうございました。
最後になりましたが、会津若松市「ヒューマンハブ天寧寺倉庫」と「いろりの宿 芦名」の皆さまに心より感謝申し上げます。