日本人の食生活が短期間でガラリと変わったのは、戦後のこと。
戦前までは一般的には「ごはんとみそ汁」に植物性のおかずが基本で、動物性のおかずは魚介類。いわゆる「日本型食生活」だった。
それが戦後になると、お米の消費が減り、パンの消費が一時的に増えたほか、肉や卵、牛乳、油脂類、乳製品といった動物性たんぱく質と油脂類が急増した。
農水省の「食料需給表」(昔)と「食糧需給表」(今)で1人あたりの年間消費量の数字を見ると、その「急増」の程度がよくわかる。
戦前の昭和初期と戦後の昭和35年度(1960年度)を比較すると、約20年間で肉類は約2倍、鶏卵は約3倍、魚介類は約3倍、牛乳乳製品は7倍、油脂類5倍に増えた一方で、お米は約1割減になった。
ここから昭和後期になると、さらに肉類は約6倍、鶏卵は約2倍、牛乳乳製品は3倍、油脂類3倍に増えた一方で、お米は約2割減、魚介類は1.2倍の微増、味噌は約2割減、醤油は約1割減というふうに、かつての日本型食生活が崩れていく様子が見て取れる。
昭和後期から2022年度になると、肉、鶏卵、牛乳乳製品、油脂類は微増かほぼ横ばいだが、醤油と魚介類は約2割減、お米と味噌も微減だった。
昭和後期以降は戦後のような急激な変化はないものの、欧米型の食生活は定着し、お米、味噌、醤油、魚介類といった日本型食生活に欠かせない食材の消費はじわじわと減り続けている。
結果として、戦前から2022年度までの約90年間で、お米は3割減となった一方で、なんと肉類は15倍、牛乳乳製品は31倍、油脂類は17倍に増えた。見間違いではないかと思ってしまうほどの急増ぶりだ。
現在の米不足や米価上昇の背景には、お米を食べない→米余り→米価下落防止のための減反→生産量減といった歴史もあった。日本型食生活はヘルシーであり、自給率のアップにもつながり、食糧の安全保障にもつながる。さらに、水田の多面的機能によって、地下水の涵養や、土砂崩れの防止など、〝一石数鳥〟の食生活だと感じる。そして、日本型食生活の中心にはお米がある。お米の魅力を見直すことで、日本型食生活を見直すことにもつながるのではないだろうか。
こうしたお米にまつわるアレコレを書いた拙著が5月19日に発売予定(このブログには書いていない内容です)。普段何気なく食べてきたお米の見方・考え方が変わるきっかけになれば嬉しいです。
「知れば知るほどおもしろい お米のはなし」(三笠書房 知的生き方文庫)