柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

「ササニシキは原種に近い」?

ササニシキは原種に近い」という表現をweb記事や生産者のホームページやグルメ系の雑誌など、さまざまなところで目にする。

その度に、ここで言われている「原種」とは何を意味するのだろうと考え込む。

調べてみると「原種」の意味は2種類ある。

1つは「種子をつくるために使われる種子」のこと。

もう1つは「品種改良以前の種子」「在来種」のこと。

ササニシキは原種に近い」は、おそらく前者のことではなく後者を指しているのかなと思うが、ササニシキは果たして「品種改良以前の種子」「在来種」に近いのだろうか。

1907年に富山県の石黒岩次郎が「愛国」から選抜して生み出した「銀坊主」。これは「改良品種」に入るのだろうか。あるいは、明治時代以降の公的機関によって育種された品種が「改良品種」なのだろうか。

コシヒカリが生まれた年は1956年で、ササニシキが生まれたのは7年後の1963年。

コシヒカリの親の親である「農林8号」は、ササニシキの親の親でもある。

そして、ササニシキの親である「ハツニシキ」は、コシヒカリのきょうだいでもある(親は「農林22号」と「農林1号」)。

こうしてみていくと、コシヒカリよりもササニシキのほうが「原種に近い」理由がどうしてもわからない。原種に近いっていったいどういうことなんだろう。