柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

亀治もびっくり「亀の尾」リゾット

新品種が続々と出てくる。もはや覚えられないほどだ。一方で、いわゆる“昔品種”にも注目が集まり始めている。

 

最近ではお酒に使われていることが多い「亀の尾」は1893年に誕生した品種で、コシヒカリササニシキなど良食味と言われるお米のルーツ。多肥料栽培時代に突入してからは長稈で倒伏しやすいということで作られなくなった。ところが、最近では酒造用に使われることが多くなり、さらに「無肥料栽培に合う」と作る農家が増えてきた。

 

白ごはんで食べてもおいしいけど、なんとイタリア料理にも合う。

 

福島県郡山市のイタリア料理店「インコントラ ヒラヤマ」では、福島県猪苗代町「つちや農園」の自然栽培亀の尾を使ったリゾットを提供している。「亀の尾は出汁を吸いやすく、かつ出汁に負けない米の存在感がある。米に出汁が入るだけでなく、米から出汁に出る旨みも感じられる」と話すのは、オーナーシェフの平山真吾さん。食べてみると、粒立ちが良く、ソースの中でもしっかりとした食感。程よいアルデンテ(少し芯が残った状態)でおいしい。

 

ちなみに、イタリアでリゾットに使われている「カルナローリ」という品種は大粒で白濁している上、心白がある。一方で、亀の尾は丸みがあって腹白になりやすい。ここまで見た目が違い、しかも明治生まれの日本のお米が異国の料理に合うとは…。亀の尾の生みの親である阿部亀治さんもさぞびっくりしているに違いない。

日本農業新聞コラム「柏木智帆のライスワークはライフワーク」)