柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

「さわのはな」を食べる

山形県産「さわのはな」という品種の玄米と白米を買った。その理由は、「さわのはな」が小粒なのかどうかを確かめるため。

20代のころ、都内のカフェで開かれたタネのイベントで「さわのはな」の生産者に出会った。

当時はお米のことをあまり知らなかったのだが、生産者から「『さわのはな』は小粒なので人気がないので廃れてしまった希少品種」というような話を聞いた。

山の分校とか、絶滅危惧種の生物とか、在来野菜とか、消えゆくものを新聞記事に取り上げることが多かった私は、さっそく帰宅後に「さわのはな」を買って食べた記憶がある。

それから月日が経ち、「さわのはな」って本当に小粒なんだろうか?という疑問が湧き始めた。

「米品種大全7」を見ると、「玄米は大粒で、腹白がやや多い」「1991年から耐倒伏性に強い良食味品種はえぬきが同熟期に奨励され作付減少」と書いてある。なんか聞いていたのと違うような。

インターネット検索すると、ある生産者の販売サイトに「玄米の胚芽が大きいので、精米すると小粒になる」と書いてある。これも聞いていたのと違うような。

購入して確かめてみると、胚芽は特別大きく見えず、白米は小粒といえば小粒かもしれないが、小粒気味と言われる「ミルキークイーン」と同じくらい(米品種大全には粒の大きさは「中」と書いてあるけど)。在来品種「関取」のような小ささではない。

ちなみに、複数の販売サイトを見ると、「さわのはな」のことを「在来種」と書いてあるサイトもあった。

しかし、「さわのはな」は1960年に山形県農業試験場尾花沢試験地で生まれた交配品種。父が「農林8号」で、母が「abc」という不思議な名前の品種。「abc」の父は「奥羽191号」、母は「奥羽200号」。先祖をたどると「愛国」「陸羽132号」「亀の尾」「朝日」など名品種が名を連ねる。

系譜出典:農研機構

「さわのはな」まとめ
◆そこまで小粒ではない
◆胚芽は特別大きいわけではない
◆作付け減少は「はえぬき」奨励の要因が大きい
◆在来種ではない
◆「希少品種」の定義は不明だが、令和4年産の検査数量を見ると、たしかに希少かも(「ササシグレ」「みどり豊」「越路早生」などはもっと少ない)