柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

ごはんにおでんつゆをかける

「かけめし(鮭)」を注文したら、ごはんの上に焼き鮭が乗せられ、最後になんと目の前のおでん鍋からつゆが注がれた。

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「お茶漬け」はごはんにお茶をかける。「だし茶漬け」はごはんに出汁をかける。この2パターンしか知らなかったけど、この店の「かけめし」はごはんおでんつゆをかけるらしい。

本当はシンプルに緑茶や焙じ茶をかけるお茶漬けが一番好きだけど、この店だったらやはり「かけめし」。

なぜなら、さっきまでこのおでんつゆで煮込まれたおでんを食べていたから。

鍋の最後にごはんを入れてつくる卵雑炊は、野菜や豆腐を食べた体験が、卵雑炊をおいしくしていると思う。

某有名おでん屋で最後にごはんの上によく染みた豆腐おでんを乗せておでんつゆをかける「とうめし」も、おでんを食べた体験が、とうめしをおいしくしていると思う。

屋台のおでん屋でワンカップ日本酒におでんつゆを入れた「日本酒のおでん割り」なる飲み物も、おでんを食べた体験が、日本酒のおでん割りをおいしくしていると思う。

どれも、最初から雑炊だけ食べても、とうめしだけ食べても、日本酒のおでん割りだけ飲んでも、それはそれでおいしいかもしれないけど、ちょっと物足りない。ただ単純に、時間をかけて具材を煮込んだおでんのつゆだからとか、野菜の出汁が出た鍋の雑炊だからとか、そういうおいしさとはちょっと違うおいしさがあると思っている。

食卓にもストーリーがある。そして、ストーリーのある食べものっておいしい。