「のりべん考」で海苔弁に合うおかずは玉子焼きときんぴらごぼうだと思うと書いたら、玉子焼きは甘いのか甘くないのかという質問があった。
海苔弁のおかずとして想定していたのは、出汁と醤油を少し入れた、甘くない、かつ、しょっぱすぎない玉子焼き。だからこそ、口直し、箸休めになる。私は甘い玉子焼きはあまり好きではない。
しかし、甘い玉子焼きが好きな人もいる。
誰もが好む玉子焼きを作ることは至難の業だと思う。
子供の頃は甘い玉子焼きも食べていた。家族で近所の回転寿司店に行くと必ず注文していた出汁巻き玉子は甘かった。
出汁をたっぷり含んだぷるぷるの出汁巻き玉子に箸を入れると、出汁が溢れ、口に含むと熱々で少し甘めの出汁がじゅわっと広がる。しかし、甘いだけではなく、しっかりと出汁と塩味が効いていたから好きだったのかもしれない。
甘くない玉子焼きがおいしいかもしれないと思うようになったのは高校3年生の時に大阪で食べた明石焼き。出汁と塩味だけであまりにもおいしかった。その後、大根おろしと醤油で食べる甘くない玉子焼きを知ると、ますます甘くない玉子焼きに惹かれていった。
そもそも甘い佃煮や煮豆などの甘いものが苦手だけど、甘い玉子焼きが苦手な理由はごはんのおかずにならないから。そのため、太巻きの具の甘い玉子や、寿司の玉子など、ごはんと一体となっているものはおいしいと感じる。
ちなみに、外食や弁当で甘い玉子焼きが出てきてしまったら、醤油につけて食べれば、なんとかごはんのおかずになってくれる。
この「玉子焼きは甘いか甘くないか問題」や「梅干しは甘いか酸っぱいか問題」は、地域や家庭環境に関係なく日本人の嗜好を二分しているように感じる。それくらい好みは人それぞれ。
私は甘くない玉子焼きが好きだけど、お酒や珈琲など、“大人の味”を知る大人が「わたし甘い玉子焼きなんです、うふふ」と話しているのを聞くと、なぜかちょっと嬉しくなる。