柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

巻き寿司のキュウリとおいなりさんのごはん

おいなりさんが苦手だったけど、おいなりさんを好みの味で自作するようになってから、おいなりさんが好きになった。

おいなりさんが苦手だった理由は、お揚げが甘いから。きつねうどんのきつねも甘い。きつねうどんはカリッと炙った油揚げを乗せるだけでいいのに、と今でも思っている。

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一方で、太巻きは好き。でも、太巻きだって甘い。甘めの玉子焼き、甘めの椎茸煮、甘めのかんぴょう煮、そして、ときどき甘めの煮穴子、甘めの桜でんぶなどが入っている。甘いのになんで太巻きは好きなんだろうと考えると、キュウリのおかげだということに気づいた。

太巻きには必ずキュウリが入っている。キュウリは甘くない。そして、みずみずしくて爽やかで歯ごたえもいい。キュウリが入っているのと入っていないのとでは大違い。他の具材が1つくらい欠けても太巻きは相変わらずおいしいけど、もしもキュウリが入っていなかったら、おそらくその太巻きは甘くて食べられない。キュウリが太巻きのすべてを中和してくれていたのだ。

だからといって、おいなりさんにキュウリを入れるというのはどうなんだろう。とにかく、おいしいおいなりさんを作るためにいろいろなおいなりさんを食べてみようと、今まで避けていたおいなりさんを買って食べてみるようになった。

すると、気づいたのだ。おいなりさんのお揚げの甘さを中和するのは、ごはんだということに。

お揚げが甘くて、ごはんの量が少ないと、誰もお揚げの甘さを中和してくれない。ごはんの量が少なくてお揚げを持て余し、お揚げを折り返しているおいなりさんを食べると、「甘っ」と思う。でも、お揚げが甘くてもたっぷりとごはんが入っていると、お揚げの甘さが少し薄まる(酢飯が甘い場合はあてはまらない)。

味の濃い具材や、肉や魚や卵などの動物性食品は、目立つので料理の主役に見られがちだけど、実は料理を中和する食材こそが主役。おいなりさんの主役はごはんで、太巻きの主役はキュウリ。そう考えると、いろいろなおかずを受け止める白ごはんはやはり食卓の主役だよなーと確信した。