柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

業務用米もおもしろい

おいしいけど業務用米として使われることが多い品種。その代表として山形県産「はえぬき」がある。最近、この米のポテンシャルを活かした飲食店に出会う機会が増えた。

 

東京・銀座の「アロセリアラパンサ」はスペインの米料理専門店。パエリアなどに山形県産「はえぬき」を使っている。店主のビクトル・ガルシアさんによると、「はえぬき」を選ぶ決め手はアルデンテとふっくら感のバランスの良さ。

 

「スペインの米はアルデンテ(少し芯が残った状態)に仕上げやすいけど、米粒がどことなく崩れている感じがして、ぷりっとしない。日本の米は加熱していくとアルデンテを一瞬で超えてしまけど、はえぬきは煮込んでもお米がべちゃっとならない」とガルシアさん。

 

パエリアの表面は程よい焦げ目が付き、中はしっとり。米粒はふっくらして、一粒一粒の粒が際立っている。

 

東京・恵比寿の中華料理店「マサズキッチン」では、炒飯にはえぬきを使っている。代表取締役兼料理長の鯰江真仁さんは「粘りが強い米だとべちょっとするけど、はえぬきは粘りすぎずデンプンのバランスがちょうど良い」と言う。粒に弾力があり、しっとりぱらぱら。食べ応えがあるものの重たくない。

 

「この米は業務用」「あの品種にはかなわない」と用途を制限したりレッテル貼りをしたりしてはもったいない。「ふさおとめ」だって「彩のかがやき」だって、それぞれの特性を活かせば、どんな米もきっと輝ける。

日本農業新聞コラム「柏木智帆のライスワークはライフワーク」)