郡山市にある「たけや」におむすびを買いに行ってきた。
以前から気になっていたけど、なかなか行く機会がなかった。ようやく機会が巡ってきたので、張り切ってまずはネットで下調べ。
すると、「並んで買えた」という人もいて、人気がうかがえた。たしかに到着すると数人が店の前で並んでいる。「人気」と聞くと「本当に?」と思ってしまうひねくれた性格なのだけど、軒先の「おにぎり だんご たけや」と白抜きされた青色のれんに心を掴まれた。おむすびをまだ食べても見てもいないのに期待が高まる。
店内に入ると、おむすびよりもおはぎや団子が店のセンターを陣取っていた。壁側の棚にはおむすびがずらり。おはぎや団子は冷蔵のガラスケースに入っているけど、おむすびが並ぶ棚のガラス戸は開け放し。ごはんか乾かないか心配だけど、たしかに次々と売れていくから開けておきたいよね。冷蔵のガラスケースからでなく棚からおむすびが取り出される図もとてもいい。
白い割烹着姿の女性従業員たちがきびきびと動いていて、店の狭さに対して従業員が多いように感じた。恵比寿の定食屋「こづち」や神田淡路町の「神田志乃多寿司」など、昔ながらの良い店は従業員の方がたくさんいる印象なので、この店もきっと良い店なんだろうなあと思った。
その予感どおり良い店だった。忙しそうな女性従業員におそるおそる「味ごはん(炊き込みごはん)はお肉入っていますか?お肉食べられないんですが…」と尋ねると、大袈裟なジェスチャーを交えて「大丈夫!」と言った後に具材をすべて教えてくれた。とても忙しそうなのに、とても丁寧に。
肉は入っていなかった。なんだかほっとした。ほっとしたのは肉が入っていなかったからだけではなく、女性従業員の「大丈夫!」の受け応えにほっとしたのだと思う。
選んだのは、生姜、高菜、鮭、味ごはんの4つ。夫は生姜の他に好物のいなりずしやおはぎなどを食べた。
われわれの意見は「ごはんだけを見るとイマイチ。だけど、おいしい」。そして夫は「今まで食べたおむすび屋の中で一番うまいと思った」と言った。なんとなくその意味がわかる。
夫がおむすびに求めるものはごはんのおいしさではなく、店の雰囲気も含めた、おむすびからそこはかとなく漂うもの。それは何なのか、夫と一緒に言語化を試みた。懐かしさ?安心感?素朴さ?どれも間違いではないけど、どんぴしゃりでもない。なんかいいよね、ということなのだ。
それでも私のナンバーワンおむすびはやはり別の店。でも、このお店もナンバーワンだと思った。明らかに矛盾しているけど、ナンバーワンは一つではない。
その日以来、「郡山」と聞くと「たけや」と連想してしまうほど、「たけや」に恋してしまった。