柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

おでんそば

ついに食べた。おでんそば。

近所の蕎麦屋の壁に貼られたメニューをいつも見て気になっていた。
かけ蕎麦におでんの具がトッピングされているのか?いや、まさかおでんつゆに蕎麦が入っているのか?

意を決して注文してみると、運ばれてきたのは、、、

 

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まさに、おでんそば。

主役はおでん。蕎麦の影がここまで薄くなる蕎麦に初めて出会った。おでんつゆに浸った蕎麦は、風邪をひいているときに食べたくなるような、優しい味。

でも、正直に言うと、おでんはおでんで食べたいし、蕎麦は蕎麦で食べたい。あるいは、おでんうどんのほうが、つゆと麺がそれぞれ生きたかもしれない。

おでんそばを食べていると、相席していたおばちゃんが「おいしい?」と話しかけてきた。このおばちゃん、私が店に入ったときはすでに蕎麦を食べていて、「おねえさん、ここ、どうぞ」と自ら相席を申し出てくれた。おでんそばが運ばれてきたときも、その見た目に、私と一緒に「わあー」と小さな歓声をあげてくれた。

店内の壁にはメニューが書かれた短冊がずらり。ジリジリと黒電話が鳴って出前の注文が入ると、かけ蕎麦にぴったりとラップをして、原付で届けに行く。白衣に白色の三角巾をしたおばちゃんが笑顔で注文を聞きにきて、大きな声で厨房に注文を伝える。そんな雰囲気の店。

こういう店の不思議は、この店の蕎麦を食べに来ている客がみんないい人に見えてくること。きっとここにいる客のほとんどが、白衣のおばちゃんや黒電話や店の空間を愛してる。そう思うと、いつのまにか、ここにいる客の全員を好きになっている。

そんな空間で食べる蕎麦は間違いなくおいしいに決まっている。空間まるごと食べておいしい。そんな店にもっと出会いたい。