柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

瓶ビールと父

父は箱根駅伝が大好きで、年末には必ず選手名鑑のようなものを買い、正月2日・3日は早起きしてテレビをつけ、スタート前から箱根駅伝の中継を見ている。国道一号線を選手が通るときは、沿道まで出て「行け!行け!」と選手に大声をかける。

 

箱根駅伝のスポンサーは昔からサッポロビール。CMでサッポロビールのフレーズをよく聞いていたせいか、サッポロビールのラベルを見ると、箱根駅伝と父を思い出し、箱根駅伝を見ると、サッポロビールと父を思い出す。

 

そんな父が家族で外食するときに最初に注文するのはいつも瓶ビール。父には生ビールよりも瓶ビールがよく似合う。

 

大人になったら父と一緒に瓶ビールを飲むようになるのかと思っていたけど、大きくなった私はビールに興味がわかず、 もっぱら日本酒。乾杯だけでもビールにすれば良いものを、最初から日本酒を注文してしまう協調性のない人間に育った。

 

最近は協調性というものを覚えて、とりあえず乾杯だけはほんの少しビールを飲むようにしているけど、本当は乾杯から日本酒が飲みたい。

 

 小さいころ、毎日(休日は昼から)ビールを飲む父を見て、頻繁に酒店の角打ちや宴会に行く父に同行してビールを飲む大人たちを見てきたにもかかわらず、ビールが好きではないのはなぜなのか。記憶をたどると、学生のころの一件を思い出した。

 

友人同士でふざけてビールがけ(若気の至り)をしていたときに、ビールを吹き出させるために友人が思い切り振ったビール瓶の底が私の額に当たって、ちょうど前髪の生え際がパックリと切れた。だらだらと流れる自分の血を見て腰が抜けた。時間が経つと、かぶったビールのアルコールのせいか寒くなり、出血の恐怖も相まってがたがた震えた。それ以来、ビールの香りをかぐとあの一件を思い出すようになって、ビールを嫌厭するようになった。

 

直後に始めた就職活動時のプロフィル写真をよーく見ると、髪の生え際が切れていて、いま見ると笑える。あれから約15年。ビールも気が向いたときは飲むようになった。

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ビールは気が向いたとき(真夏の音楽フェスと海外旅は除く)。