柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

食べもののにおい

先日、長距離バスの中で何かのにおいで気持ち悪くなった。においの元は何だろうと見回すと、後方の座席の男性が食べていたマクドナルドのバーガーだった。そういえば、バスの待合所で男子学生の集団が地べたに座ってマクドナルドのバーガーやポテトを食べていた。きっと彼はバスに乗るまでにそれを食べ終わらなかったのだろう。

 

少し前にも、朝の新幹線の中で何かのにおいで気持ち悪くなった。においの元を探すと、近くの男性が食べていた崎陽軒のシウマイ弁当だった。きっと朝食なんだろう。

 

学生のころ、浅草演芸場で落語を聞きに行ったら、何かのにおいで気持ち悪くなった。においの元を探すと、前方の座席の客が肉まんを食べていた。たしかに、咀嚼音や開封音などが立たないので落語の邪魔にはならないのかもしれない。

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納豆ごはんは大好きだけど、バスや新幹線や浅草演芸場では食べない

飲食禁止の場でもなく、何を食べようが個人の自由ではあるので、こちらががまんするしかない。でも、「く、くさいかな?」とにおいを気にしながら食べるよりは、においを気にしない場で食べたほうが食事を楽しめるように思う。

 

学生時代、1人で青春18切符を使って東北ローカル線の旅を楽しんでいたとき、米沢駅で途中下車してみた。お腹がすいたからだ。駅を出て飲食店を探したけど、歩けども歩けども「米沢牛」と「ラーメン」ばかり。肉が食べられない私は困り果てた。駅に立ち食い蕎麦があったけど、学生時代は立ったまま食事をするなんて行儀が悪いと思っていた(今は立ち飲みや立ち食いそばが好きなのに)。

 

そんなとき、駅近くのおみやげ屋さんで「雪割納豆」なるものを見つけた。当時の私は雪割納豆を知らなかった。せっかくならば東北の味を楽しもう!と思いつき、近くのコンビニで白飯を買った。雪割納豆ごはんを食べようと思った。なんてすばらしいアイデアだ!と自画自賛。

 

しかし、どこで食べればいいんだろう?記録的な豪雪だった年で、あちこちにまだ雪が残る3月の米沢。外は寒い。風も強い。ひとまず駅へ戻った。待合室は暖かそうだ。でも、さすがに待合室で納豆ごはんを食べたら納豆のにおいが充満してしまうに違いない。「く、くさいかな?」と気にしながら食べたり、周囲の人から「くさいなあ」と白い目を向けられながら食べたら、せっかくの納豆ごはんのおいしさが半減してしまうに違いない。

 

みなさんに迷惑をかけずに「座って」納豆ごはんを食べることができる場所はどこだ!と探すと、あった。駅のホームのベンチ。次の電車は40分後。まだ誰もいない。

 

寒風吹きすさぶ中、ホームのベンチに座り、コンビニで買った白ごはんに雪割納豆を乗せて食べた。待合所の窓からこちらを見ている人がいる。たしかにまだ電車が来ないのにわざわざ寒いホームに出る人はいない。

 

雪割納豆は思いのほかしょっぱくて、正直いって普通の納豆のほうが好きだった。でも、「く、くさくないかな?」と周りに気を遣わうこともなく、寒風で耳をキンキンに冷やしながら曇り空の下で決行した食事は、なんだか清々しかった。