柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

赤い魚

福島県の地方紙「福島民報」(2019.1.5.付)に会津地方に残る童謡が紹介されていた。

 

「正月さまはいいもんだ/雪のようなまんま(白米)食って/紅(べに)のような魚(およ)食って/油のような酒のんで/正月さまっていいもんだ」

 

福島県会津地方の夫の実家では大晦日の晩はハレのごちそうとして「赤い魚」「納豆」「大根おろし」「ごはん」を食べるため、「紅のような魚」「雪のようなまんま」という歌詞にちょっと興奮した。「もしかしたら赤い魚を食べるのは夫の実家だけなのだろうか…」とも思っていたけど、やはり同じような食文化の家はあるらしい。

 

お父ちゃん(義父)によると、「赤い魚」は昔はマスだったのではないかとのこと。今は焼いた塩ザケ。サケといえば焼ザケ定食とかおむすびのシャケとか、どちらかというとハレではなくケの魚のイメージで、お祝いと言えば「めでたい」の「タイ」だと思っていた。

 

でも、「サケ」ではなく「赤い魚」と呼び方を変えるだけで、ハレの魚に見えてくる。白いごはんに赤い鮭。紅白でたしかにめでたい。

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赤い魚

きっと昔は日常で赤い魚を食べることが少なかったのではないだろうか。日常的に食べていたらわざわざハレの食卓に赤い魚を登場させるだろうか。

 

いずれにしても、現代ではスーパーに行けばいつでも塩ザケを買うことができる。しかし、日常的に赤い魚を食べていたらハレの食卓のありがたさが薄まってしまう。思えば昨年の12月はサケを食べる機会がたまたまなかった。それだけに、大晦日に夫の実家でお母ちゃん(義母)が焼いてくれた赤い魚(塩ザケ)を食べ、しみじみとハレを感じた。今年も12月に入ったら大晦日のためにサケ断ちをしようと思う。