柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

娘がピーマンと出会う日は

独身時代、栄養士・幕内秀夫さんの著書「なぜ子どもはピーマンが嫌いなのか?」(西日本新聞社)を読んでナルホドと思った。

 

簡単に言うと、子どもは「緑色」「においが強い」「苦い」野菜を本能的に避けるのだという。緑は未成熟の信号、強いにおいは腐敗の信号、苦さは毒の信号という説明に納得。たしかに未成熟の野菜は鳥も食べないし、子どもはコーヒーやビールを本能的に嫌うし、山菜や薬味を好きな子どもは珍しい。

 

そして、子どもは生きていくうえで何が必要かを分かっているから、甘くてにおいが少ないものを好む。つまり、母乳、ごはん(お米)、芋類やかぼちゃなどだという。

 

結婚してムスメが生まれ、ムスメの離乳食が始まってからは、この本に書かれていることを目の当たりにしている。

 

ムスメはそもそも母乳ばかり飲んでいて、なかなか離乳食を食べようとしない。

初めて口にするものは必ず顔をしかめるが、ごはんとかぼちゃだけは顔をしかめなかった。

最初は顔をしかめたものの食べるようになったのは、じゃがいも、たまねぎ、にんじん、しらす、豆腐。

キャベツ、アスパラガスはにおいが少ないし苦みも少ないから食べられるかなと思って何回かあげてみたけど、やはり嫌がった。この様子だと、緑でにおいが強くて苦いピーマンは絶対に食べるはずがない。だから、やはりピーマンを食べてもらおうなんて思わないし、食べなくても問題だと思わない。

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幕内さんが言うように、子どもは生きていくうえで何が必要か知っている。

茹でて刻んでごはんに紛れ込んだアスパラガス。ほんの少量だというのに、察知して拒否するムスメの味覚の鋭敏さと本能的な判断に感動すら覚えた。

 

いつかムスメがピーマンをおいしいと食べるようになる時は、この苦みの魅力が分かるようになったんだなあ…とちょっぴり寂しい気持ちになりそうだ。

 

ちなみに私のピーマンデビューはたしか小学校低学年くらいの時。それまでは大嫌いだったが、母の友人のカジマさんの家庭菜園でピーマンを収穫させてもらい、カジマさんに促されるままにその場でかじったら意外にも食べられた。

おそらく、畑の茎や葉からぷんぷん放たれる青臭さに鼻が慣れ、ピーマンが成っている様子を見た上で自分で収穫したことによってピーマンが何者であるかが分かった気になり、さらに自分で収穫したのだからおいしいに決まっているというセルフマインドコントロールがあったりしたのだと思う。

 

子どもの野菜嫌い克服のために、子どもがわからないように肉に混ぜ込んだり、マヨネーズやケチャップなど調味料の味の濃さでごまかしたりするレシピを目にするけど、騙して食べさせても野菜嫌い克服につながるどころか、私が子どもだったら騙されて食べさせられたことで不信感がわいてしまうと思う。ママの作った料理は何が入っているか分からないからこわい…と思われたら悲しすぎる。

 

ムスメが歩けるようになったらお父ちゃんの家庭菜園で野菜を観察したりお世話したり収穫したりして、あとは娘の感性に任せよう。

こんなふうに気楽に構えられるのも、娘がお米はなんとか食べてくれているからだと思う。甘くて、においが少なくて、たくさん食べてもくどくなくて、毎日食べても飽きない。お米はやはり万能だなあと、ムスメの離乳食を見てもなお思うのだった。