柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

おべんとうばこのうた・その3

「おべんとうばのうた」に続き、「おべんとうばこのうた・その2」を書いた後、近所の図書館で「おべんとうばこのうた」(構成・絵 さいとうしのぶ/ひさかたチャイルド)を発見した。

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素晴らしい絵本であった。

おにぎりから始まり、刻みしょうが、ごま塩、にんじん、さくらんぼ、しいたけ、ごぼう、れんこん、フキが登場する。そして、おにぎりや野菜たちが、わらべうた手遊びの振り付けをしている。完成したお弁当のおいしそうなこと。

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あまりにもおいしそうなので、1歳の娘がもう少し大きくなったら歌の通りのお弁当を作ろうと思った。刻み生姜の辛味やフキの風味はまだ無理そうだけど。

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しかし夫はこのお弁当が特別おいしそうだとは思えないらしい。たしかに先日、フキの炒り煮を作ったら、「おれは田舎者だから田舎料理はあんまり」と言っていたので、フキの炒り煮好きな私がひとりじめした。

田舎と都会の線引きは人によって基準が違いそうだが、私の母は田舎出身だと思う。「煮物がないと落ち着かない」と言って、夕食の食卓にはほぼ365日なにかしらの煮物があった。カレーの日も煮物はあった。

その血を受け継いだというか、習慣を受け継いだというか、私もまた煮物がないとなんだか落ち着かないというか、物足りないというか。

おべんとうばこのうたの歌詞通りのお弁当は、おそらく、にんじん、しいたけ、ごぼう、れんこん、フキは煮物ではないかと思う。

煮物好きの私はこのお弁当をおいしそうだと思うけど、もしかしたら夫のようにおいしそうだと思わない人は多いのかもしれない。

とは言え、娘はこの絵本を見て喜んでいる。娘の楽しそうな様子を見ていると、やはりわざわざ歌詞を改変しなくて良いのでは、と感じる。大人の感覚で先回りしすぎると子どもの世界を狭めてしまっておもしろくない。思い返すと、子どもの頃は食卓に子ども向けのおかずはなかった。食べたいおかずがない時は、ほとんどごはんと味噌汁で終わりにしていた。そして夕食後に父が酒の肴に焼いたスルメイカをもらってかじったりしていた。

先日も実家に帰った時、父が酒の肴に七輪で焼いた魚の味醂干しを小学生の甥っ子や姪っ子がおいしそうに食べていた。そうやって子どもの味の幅は少しづつ広がっていく。フキの煮物や刻み生姜もいつか好むようになるかもしれない。