柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

お米と日本酒の〝経時優化〟

お米と日本酒は似ている・その1」で、開栓時よりも数日経ってからのほうがおいしい日本酒、精米から数日経ってからおいしいお米の話、年明けから味がのってくるお米のことを書いた。

7日前に開栓したある日本酒は、とてもきれいな酸の奥にサイダーっぽい甘さとすっきり感があったのだけど、今日飲んでみたら苦味を感じて酸のキレがなくなっているように感じた。きっとこの日本酒は開栓時が最高潮なのだと思う。

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お米も一般的には新米のときはまだ水分が落ち着いていないので年明けくらいから味わいが増す場合が多いが、中には新米の時がピークのお米もある。産地を書くと誤解を生みやすいので書かないが、そういう傾向の産地もある。

新米時がピークのお米と、開栓時がピークの日本酒。いずれも市場の評価が高いお米であり日本酒なのは、お米のコンテストは新米時期に行われ、日本酒は開栓してすぐ飲んだときの評価が一般的だからなのだろうか。

もちろん新米時にピークのお米や開栓時がピークの日本酒も好きだけど、良い方向に経時変化していくお米や日本酒に興味が向く。

今朝の「毎日新聞」日曜版一面下に服の通販の広告が載っていて「着込むほどに風合いや色合いが増す。それは〝経年優化〟という新しい愛着」と書いてあり、「経年劣化」はよく耳にするものの、〝経年優化〟は初めて出会った言葉だったので目を引いた。

イタリアでは5年物、7年物のヴィンテージ米が重宝され高値で販売されている。鮨屋が重宝する古米や琥珀色の古酒とは別ジャンルで、春先から味がのってくるお米や1年近く経って味が濃くなるお米、開栓して1ヶ月後に味わいが増す日本酒など〝経時優化〟のお米や日本酒のおもしろさに注目していきたい。