柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

さみしいおむすび

ふりかけは混ぜたくない」で書いたが、ふりかけを混ぜたおむすびがあまり好きではない。

ところが、子どもの頃にスイミングや水泳部の試合で母が持たせてくれるおむすびは多くの場合ごはんにふりかけが混ぜられていた。

それだけでなく具まで入っていた。

ごはんに味がついているのに、具も入っている。

当時はだまって食べていたが、大人になってから母に言ってみた。

「ふりかけごはんならば具は要らないのでは?あるいは、具を入れるならば白ごはんが良いのでは?」

すると、母からは「いや、さみしいと思って」と返ってきた。

ごはんにふりかけを混ぜないとさみしいし、具が入っていないとさみしいと思ったらしい。

「母の味」を引き継ぐのだとしたら、混ぜごはんのおむすびに具を入れるのだろうが、私が作るおむすびは「白ごはんに具あり」か「混ぜごはんに具なし」のいずれかである。必ずしも「母の味=受け継ぎたい味」ではないことを知り、ほんの少しだけ切ない気持ちになったが、「混ぜごはんに具ありのおむすび」は今では笑い話になっている。

塩むすびは母にとっては「さみしいおむすび」なのだろうか

一方で、母の味噌汁は紆余曲折して「受け継ぎたい味」になってきた。

母の味噌汁は具だくさんで必ず薄いくし切りの玉ねぎが入っている。

大人になって外食するようになってからは、味噌汁に玉ねぎが入っている味噌汁が少ないことを知った。母の味噌汁の話をすると、「え?たまねぎ入れるの?!」と驚く知人もいた。それだけに、長野県のビオホテル「カミツレ宿 八寿恵荘」で玉ねぎだけが具材の味噌汁を飲んだときはちょっと驚いた(とてもおいしかった)。

ただ、東京で一人暮らししていた頃は具が多い味噌汁よりもシンプルな味噌汁が好きになり、自分で作る味噌汁はいつも具材は1〜2種類と決めていた。

ところが、ここ数年、なぜか母の具だくさんで薄いくし切りの玉ねぎが入った味噌汁が好きになってきた。本当になぜだかわからないけど。

普段味噌汁をほとんど飲まない娘は「ばば(私の母)」の味噌汁だけはごくごく飲む(具材は食べない)。出汁や味噌を真似しても、なぜか娘はばばの味噌汁しか飲まない。これだけでも「受け継ぎたい味」の理由としてはじゅうぶん。それにしても、同じ食材を使っても同じような味噌汁にならないのはなぜなんだろう。家庭料理も奥が深い。