柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

激減するお米屋さん

米屋は1972(昭和47)年に約4万件、20年後の1994(平成6)年は約3万4000件あったが、それから20年後の2016(平成28)年には約9800件と3分の1以下にまで激減した。

内訳を見ると、1994年は法人経営の米屋が約1万件、個人経営の米屋が約2万4000件だったが、2016年になると法人経営の米屋は2900件、個人経営の米屋は約7000件と、それぞれ7割ずつ減っている。

そして、2021年になると、法人経営の米屋はさらに3割減の約2000件になり、個人経営の米屋の件数は調査無しとなった。もしも法人経営と同じペースで減少しているならば、5000件を切っている可能性もある。

(いずれも経済産業省「令和3年経済センサス」・1972年は経済産業省「商業統計」参照)

最近でも神奈川県の米屋から「近くの米屋が閉めてしまったので、得意先を引き継いだ」「農家さんと同じで米業界も若い人がいない」「ものすごい勢いで米屋・問屋がなくなっている」と聞いた。

米屋でお米を買う消費者も減っている。

2021(令和3)年度のお米の購入・入手経路を見てみると、半数が「スーパーマーケット」で、次いで15%が「家族・知人から無償で入手」とある。いわゆる「縁故米(えんこまい)」だ。

そして、「インターネットショップ」「ドラッグストア」「生協」「生産者から直接購入」と続き、「米穀専門店(米屋)」はたったの2%(公益社団法人米穀安定供給確保支援機構「米の消費動向調査」)。米屋が減少している理由には、後継者不足というケースもあるが、購入先として選ばれなくなってきたといった要素も大きそうだ。

ある米屋は「みんな米屋で米を買わないのに、新米の季節になるとメディアは米について取材に来る」と言っていた。たしかにその通り。

1993年の大凶作による米不足で体力を奪われた米屋が94年以降に減っていったと言われているが、2024年も米屋は1993年のような状況に追い込まれかれない。

猛暑による品質低下などの影響でお米が品薄気味となり、春になってから米屋が仕入れる「スポット価格(業者間取引価格)」が急上昇した。

米屋から1円でも仕入れ価格を下げたい飲食店が多い現状では、米価の上昇を販売価格へ転嫁しにくく、米屋は頭を抱えることになる。

夏になると、「令和の米騒動」と言われるほどお米が品薄状態となり、消費者の備蓄や買い占めの動きも相まって、8月の端境期になると首都圏の中心にスーパーのお米売り場の棚は空っぽになった。

すると、米屋には一見客が殺到したり「お米ありますか?」という問い合わせに追われたりと、通常業務に支障が出るほどで、シャッターを半分閉めて営業する米屋もいた。

潤沢に販売できるお米がない状況に追い込まれる米屋も多く、ある米屋は「これを機に店を閉める米屋は増えるだろう」と話していた。

お米に限らず「淘汰される時代」なんて言われているが、もしかしたら米屋の魅力に気づいていないだけかもしれない。お米について質問して、お米の知識が増えれば、お米の楽しみ方も倍増するはず。ぜひ気軽に米屋へ出かけて「推し米屋」や「推し生産者」を見つけてみてはどうだろう。