柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

「新米はおいしい」は本当?

 

日本人は新米好き。新米の時期になると、スーパーや米屋に「新米」ののぼり旗が現れ、テレビや雑誌などでは「新米特集」が組まれる。普段よりもちょっと高い米を買い、一口目はお米だけを楽しむ…という人は多い。新米にキムチをどかっと乗せて食べた知人は周囲から大ブーイングを浴びていた。果たして、新米はおいしいのだろうか?

さまざまな料理人に聞くと、「新米がおいしいというのは先入観。水気が多すぎると甘さや旨みがぼける。少し落ち着いた2月くらいからがいい」とか、「熟成させて脂が全体に回った魚にはとれたての魚とは別のおいしさがあるように、お米の旨みを感じるのも年明けすぎくらい」という意見があった。鎌倉市の米店「笹屋」は、「お米にはフィチン酸という旨み成分があり、時間を置いてお米の水分が枯れてくると、フィチン酸の濃度が増すため味が濃くなる。管理さえ行き届いていれば、新米よりも前年産米のほうがおいしい」と言う。つまり、新米にはみずみずしさや香り高さ、時間が経った米には旨みや甘さというそれぞれの良さがある。

だが、お米は生鮮食品。以前に訪ねた農家の保管庫は17度になっていて、その米を購入した人が「古米臭がした」と残念がっていた。一方で、保管温度が10度以下という農家、5度というJA、さらに低い「氷温熟成」という企業もいる。良い意味での「経時変化」を生み出せたら、年明け以降は「お米の旬」として新米並みにお米に注目してもらえるのでは。

日本農業新聞コラム「柏木智帆のライフワークはライスワーク」)