柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

大盛りライスと濃いカレー

先日、「ニューデリー」というインドカレー店へ入った。

 

インド人とみられる人たちがスタッフで、建物は喫茶店かラーメン店だったような店の居抜き。テレビからはインド音楽のDVDが流れてくる。テーブルはちぐはぐで、カウンターに2つだけ置いてある椅子はパイプ椅子。壁にはインドビールの紹介やwifiの案内などが書かれた紙が貼られ、マジックで「Look at me!」と書かれている。

f:id:chihoism0:20190311120951j:plain

気になる看板

大人たちには銀色の食器でカレーが提供されているのに、隣のテーブルの男の子にはなぜか味噌汁のお椀にカレーが入っていた。熱伝導で「あちち」とならない配慮だろうか。いずれにしても雰囲気がずいぶんと独特で、カレーを食べる前からすっかりニューデリーを気に入った。

 

注文した野菜カレーとサフランライスが出てくると、ライスの量に驚いた。大盛りって言ってないのに大盛りで出て来る定食屋のごはんよりも多い。一方で、カレーの量は普通。人によっては「ちょっと少なめだね」と言うかもしれない。

f:id:chihoism0:20190311121051j:plain

分かりにくいけど、かなりの大盛りライス

 「これはごはんが余ってしまうかもしれないなあ」と言いながら食べ始めた。ところが、カレーの味がずいぶんと濃い。そして、「辛口」にしてみたら、かなり辛い(「激辛」にしなくて良かった)。おかげでライスがぐんぐん進み、定食屋の大盛りごはんよりも多く見えたライスが瞬く間に消えた。

 

そして、最終的にはライスとごはんの量が絶妙にピッタリだった。私は感動した。

 

そこで思ったのは、日本のごはんの消費量が減っている要因の一つとして、おかずの味付けの薄さにあるのではないかということ。かつては、塩が吹くほどしょっぱい塩シャケとか、甘辛い佃煮とか、昔は味の濃いごはんのおともが多かったのではないだろうか。ある時期から「減塩」という言葉が聞かれるようになり、薄味のおかずが好まれるようになると、ごはんを食べる量も減ったのかもしれない。

 

と言っても、デスクワークが増えたからとか、炊飯が面倒とか、あくまでいろいろある要因のうちのたった一つに過ぎないけど。

 

とは言え、ニューデリーを出た後、夫と「濃かったねえ」とくり返した。そして、のどが乾いて水が飲みたくなった。でも、とてもおいしかった。しかし、「妊婦って塩分の摂り過ぎに注意って本に書いてあったなあ…」と少し気になった。

 

そうは言っても、ごはんはそんなに大量にお腹に入るものではない。普段はせいぜい1食で1合くらい。夫は一時期は1食で2合食べていたけど、一般的には多いほうだと思うし、それでも1食で2合だ。ということは、いくら味の濃いおかずを食べても、ごはんでお腹がいっぱいになれば、そこで「ごちそうさま」。塩分過多といってもそこまで塩分を摂りすぎないうちに食事が終わるのではないだろうか。

 

一方で、ごはんを食べずにおかずだけを食べると、お腹がいっぱいにならないので、おかずを食べ続けることになり、結果的に塩分はけっこう摂取するように思う。いくらしょっぱい漬物を食べても、たとえばたった2枚の漬物でごはんを2杯食べられるならば、たいした塩分摂取ではないように思う。

 

生米と水だけで調理できて、おいしくお腹を満たしてくれるごはんって、やはりすごい。ごはんを中心とした日本の食文化のすばらしさを、改めてニューデリーが教えてくれた。