柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

お米パンはお米の消費拡大に逆行する

以前に「米粉パンに思うこと」でも書いたが、米粉パンや生米パンなど、お米を原料にしたお米パンは、お米の消費拡大には繋がらないと常々思っている。

お米が原料とは言え、お米パンはパンだ。つまり、おかずはごはんでなくパンに合うおかずになる。たとえば、朝ごはんがごはんだった人がお米パンを食べるようになると、おかずはパンに合うものになり、炊飯をしなくなり、ゆくゆくはパンの食習慣がつくことにつながり、長い目で見るとパン食の定着に貢献することに繋がる。つまり、お米の消費拡大にとっては逆効果だ。

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「お米パンはお米だから和食に合う」という意見も聞くが、果たしてそうだろうか。

好みはそれぞれなので、そういう人もいるのかもしれないが、和食のおかずを食べるならばごはんで良いのでは?と思う。パンならパンに合うおかずがあるのだから、あえて和食のおかずにごはんではなくパンを合わせるのは無理やり感があるのではないだろうか。

お米パンを食べる人はパン食が食べたいからお米パンを選ぶのであり、ごはん食が食べたいならごはんを食べるだろう。グルテンフリーの人が米パンを選んだとしたら、パンが食べたいから選んでいるはず。ならば、ごはんに合う和食のおかずではなく、パンに合うおかずを選ぶのではないだろうか。そもそも和食が合うパンってどれほどニーズがあるのだろうか。

お米パンは小麦アレルギーの人にとっては嬉しい食べ物だと思うので、お米パンを全否定しているわけではない。ただ、繰り返しになるが、お米の消費拡大には繋がらないどころか逆効果だと思えてならない。
ちなみに「紫野和久傳」の和サンドイッチは、「鯖味噌サンド」にはダークチョコレートが忍ばせてあり、鯛の刺身を使った「鯛サンド」は薄造りの鯛を山椒オイルでマリネしているらしい。和食ではなく和洋折衷の新ジャンルだ。一般的なサンドイッチにはバターやマヨネーズなどオイルがプラスされているのは水分量の少ないパンには油がないと食べづらいからだと思う。パンには油が必要であることが、この和サンドイッチからも見て取れる。
ごはんとパンは粒と粉の違い、水分量の違いがあり、そもそも合うおかずは違う。小麦のおやきにはきんぴらごぼうなど和風な具材もあるが、油が使われている。しかし、和食は刺身やお浸しや和え物や煮物など油が使われていない料理も多数ある。
そう考えると、お米パンの食習慣は、ごはんよりもパンにシフトしやすいと言える。

お米の消費拡大は食卓全体を見て考えていく必要があると思う。