柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

ミルキークイーンの可能性

どちらかと言うと低アミロース米が得意ではない。

 

もちろん好きな低アミロース米もある。個人的においしいと感じる低アミロース米は、やわらかくてもちもちしていながらも、しっかりとした粒張りがあって外硬内軟。

それでも、たくさんは食べられない。どっしりと重たいのでいつもより早くお腹いっぱいになってしまうのが残念でならない。

 

そして、毎日3食のごはんが低アミロース米だとつらい。以前にラオスに行った時、ごはんが毎日糯米で胸焼けがした。低アミロース米は糯米ほどではないが、あの感覚に近いものもある。

 

そういうわけで、日常のごはんで低アミロース米を食べる頻度は少ない。そして、おいしい低アミロース米は白飯だけでそのまま食べるのが一番だと思っている。味が濃くて主張が濃い低アミロース米はおかずとの相性が難しい。どんなおかずと食べてもちぐはぐさを感じてしまう。私だけかもしれないけど。

 

そうは言ってもお米は精米したら賞味期限は2週間ほどだと思っているので、たまにしか食べないとお米が劣化してしまう。今年の福島県猪苗代町「つちや農園」の低アミロース米「ミルキークイーン」はおいしかったが、冷蔵庫にまだ残っている。そこであっさりとした食味のお米に2割混ぜたり3割混ぜたりしてブレンド米を作ってみたら新しいおいしさが生まれた。

 

そんなわけでミルキークイーンがブレンド米要員になっていたのだけど、先日福島県沼尻温泉「沼尻高原ロッジ」で料理長をしている黒澤俊光さん(通称・親方)が、つちや農園のミルキークイーンで鯖棒鮨を作ってお裾分けを持ってきてくださった。

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鯖棒鮨は一般的な鮨と違ってお米がもっちりとしているのが特徴。傷みづらいように米粒の隙間から空気を抜いて作るらしい。過去に食べたことがある鯖棒鮨はたしかコシヒカリだった。低アミロース米の鯖棒鮨は未体験だったのでどんな味わいか非常に気になった。

 

さっそく食べてみると、思わず「な、熟鮓!」。軟らかいミルキークイーンで鯖棒鮨をこしらえると熟鮓のような食べ心地なるという驚きと感動。親方はやはりすごい。そしてお米はおもしろい。授乳中で日本酒が飲めないのがつらすぎた。

 

そして、親方はミルキークイーンでこしらえたいなりずしも持ってきてくれた。

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ミルキークイーンでいなりずし?!と驚いたけど、食べてみると、おこわのようにもちもちするのではなくてごはんが口の中で溶けていく。しかし、あまじょっぱさと粘りのためか、どこかおこわ感がある。ごはんに混ぜ込まれたひじきと大豆と白胡麻が合う。

 

基本的に弾力があって粒立ちが良いごはんが好きだけど、このいなりずしは、小ぶりなサイズ、稲荷とごはんの味、ごはんや大豆の食感のバランスが絶妙でとてもおいしかった。このバランスが少しでも違っていたら、もしかしたらいまひとつに感じられたかもしれない。

 

鯖棒鮨といなりずしにミルキークイーンを使ってみるという親方の腕とセンスはすごい。お米の新たな可能性を見つけるためには「攻めの姿勢」が大事なのだと学んだ。