柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

お米を売りながら地域の魅力を売る

「地方創生」の掛け声のもと、各地には地域おこしを絡めた商品開発事例がたくさんある。その中でも注目しているのは、六次化商品の中でもユニークなお米「能登輪島米物語」。石川県輪島市の9軒の米農家たちによる商品開発プロジェクトから生まれた。

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能登輪島米物語(写真提供:Bespoke)

農家たちは自分たちの米を食べ比べ、近所の店で販売されている最高価格と最低価格の米を食べ比べ、「お客は米の味の違いを明確に分からない」と結論づけたそうだ。そこで、パッケージデザインを工夫して、海も山もある輪島の豊富な「ごはんのおとも」や、自然環境や祭りごとなどの「観光」をセットにしてお米を売っていく、つまり、「米を売りながら地域の魅力を売っていく」方向にかじを切った。

 

彼らの「競合」は、広義では日本全国のお米、狭義では能登輪島の特産品だったけど、他にはない「能登輪島の恵まれた環境」という魅力を打ち出すことで、日本全国の米に勝ち得る“武器”を持つことができた。さらに、「おかずや調味料と一緒に食べる」というお米ならではの特徴にスポットを当てることで、能登輪島にある数々の特産品という「競合」を「味方」につけるといった、これまでにない商品展開につながった。今後は輪島塗の飯椀でごはんとおかずを楽しみながら輪島を旅してもらうツアーの開催も考えているという。

 

お米はあらゆるおかずの味方になる。輪島市に限らず、他の米産地でも地域の魅力発信の牽引役になってくれると思うのだけど、どうだろうか。

(日本農業新聞「柏木智帆のライフワークはライスワーク」)