柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

令和4年産おいしかった米・2023年春分の日翌日から5月末までに食べたお米

令和4年産おいしかった米・春分の日までに食べたお米」に続き、令和4年産米を2023年2月5日から5月31日までの約4ヶ月間で計61種類のお米を食べてきた中で、特に「めちゃくちゃおいしい!」と感じたお米を6つ紹介する。

■黒田祐樹さん(がんも農場)長野県佐久市

「コシヒカリ」

黒田さんの「コシヒカリ」は過去に2度食べたことがあるが、令和4年産はダントツにおいしかった。

土鍋で炊飯すると、おねばが多くしっとりとしていて、程よい粘りと粒感があり、しっかりとした弾力もある。ざらつきはあるといえばあるのかもしれないけど気にならない。旨味があって味がいい。

炊飯器早炊きだと炊きたての米肌は少し毛羽立つが、落ち着くと気にならない。

生の米粒を見ると、太っていて胴腹に厚みがある。

ちなみに黒田さんは稲に対しても人に対しても誠実で真摯なお人柄。少年のように「なぜ?」の気持ちを大切にする人で、黒田さんから湧き出る疑問や問題提起はとてもおもしろい。私も常に学びの姿勢を大切にし続けたい。

■五十嵐成生(米の匠みのりガーデン)山形県新庄市

「コシヒカリ」

「笑みがこぼれるおいしさ」というのを体験させてもらった。

土鍋で炊くと、しっとりとして、味度が高そうな保水膜(おねば)。そして、ふわふわとエアリーな程よい粘り。米肌はつるつるで、咀嚼時もなめらか。弾力も粒感もあり、じわりと優しい甘味と旨味。少しやわらかめ。全体のバランスがいい。

少し冷めてくると、弾力・粒感がさらに好みになった。

別の土鍋で量を増やして炊いてみると、しゃっきりふっくらとして、程よい粘り。粒立ち・弾力・喉越しが良く、喉でも旨味を感じる。何と一緒に食べてもうまいという意味で「おかずを選ばないごはん」。

炊飯器早炊きだと土鍋よりも、若干粘り強め・やわらかめにに炊き上がった。

■笠原勝彦さん(笠原農場)新潟県南魚沼市

「つきあかり」

笠原さんの「つきあかり」も過去に何度か食べたことがあるが、令和4年産はダントツにおいしかった。

土鍋で炊くと、「つきあかり」っぽくない見た目に炊き上がり、硬めでしっかりとした歯ごたえも「つきあかり」に抱いていた印象と違う。しかしながら、粒立ちが好みで、しっかりとした弾力と硬さが抜群に好み。噛み込んでいくと最後に若干の粉っぽさはあるものの、米肌も咀嚼時もなめらか。そして、味がいい。

炊飯器早炊きだとまた印象がガラリと変わる。

まず、炊きあがりの見た目が「つきあかり」っぽい。つまり、キラッキラの派手な炊きあがりになる。おねばと粘りがしっかりとしてこれも「つきあかり」っぽい。少しやわらかめに炊き上がるが、弾力と粒立ちの良さは健在でこれもまた好み。なめらかさについては土鍋と同様の印象で、これもまた味がいい。

米・食味鑑定コンクール国際大会ダイヤモンド褒賞受賞農家(殿堂入り農家)の底力を思い知った。

■佐藤孝文さん・佐藤真由美さん(すよし農事)新潟県長岡市

「にこまる」

もともと「にこまる」の品種特性(粒立ちの良さ)が好きなのだが、この「にこまる」は特に好みだった。

土鍋で炊くと、しっとり・ふうわり・ほろほろ。「にこまる」らしい粒感と弾力があり、米肌も咀嚼時もなめらか。甘味系ではなく、旨味系の味の良さ。喉越しがよく、喉でも旨い。

少し粗熱が取れると急に硬くなるが、許容範囲内。炊飯器早炊きでもさほど印象は変わらず、程よい粘りでほろほろとした炊きあがり。

■吉成邦市さん(吉成農園)福島県・天栄村

「コシヒカリ」

インパクト大なお米。

土鍋で炊くと、おいしいお米に共通する(と勝手に思っている)噛み始めの感覚がある。うまく説明できないのだけど、がんばって説明すると、「歯に吸い付きながら押し返すような粘りと弾力」がある。

そして、味が濃い。旨味がすごい。喉でも旨い。

つや・おねばがあってしっとり。粒立ち良くほろほろふうわり。ハリのある弾力というよりは、優しい弾力がある。

粗熱が取れると、弾力が増して絶妙に好みの押し返し感になり、旨味も粒立ちも際立つ。保水力があり、しっとり感が続く。

炊飯器早炊きで炊くと、おねばがとにかく厚く、ふっくらしっとりと炊き上がるが、炊きたては少し水っぽく感じられた。ほんのわずかに米肌が毛羽立ち、咀嚼時にわずかな粉っぽさを感じる。土鍋炊きのほうが好みだった。

そして、精米から2週間ほど経ってから食べると、味が濃くなっていた。以前にも書いたが、お米は精米したてが新鮮でありながら、味がのってくる・味が落ち着いてくるのは精米から1週間くらい経ってからではないかなと感覚的に思う。この「コシヒカリ」は「おかずがいらない」と思えるほど味が濃くて驚いた。

ちなみに吉成さんの「ゆうだい21」もおいしいが、炊飯が難しい。個人的には1合(150g)のお米に対して185gの加水量が好みだったが、それでは「ゆうだい21」の品種としてのポテンシャルが引き出せてないようにも思える。「ゆうだい21」らしいのは200gの加水量かなと思ったが、個人的には好みではない。

お米は水加減ひとつで味わいが変わるので本当に難しいなあと改めて感じる。

また、「コシヒカリ」は旨味系で、「ゆうだい21」は甘味系であることも、「コシヒカリ」のほうが好みだと思える要因だった。

旨味系が好きか?甘味系が好きか?ということも、お米の好みを左右する。「おいしいお米」は一つではなく、食べる人によって変わるということを改めて感じた。

■土屋睦彦さん・土屋直史さん「つちや農園」福島県・猪苗代町

「ゆうだい21」

土鍋で炊くと「ゆうだい21 」らしいおねばでキラキラ。粒感があり、もちもちとした弾力があり、食べごたえがある。米肌が滑らかで咀嚼時もなめらか。麦茶のようなウエハースのような風味が感じられ、あっさりとした旨味が感じられる。

炊飯器早炊きでは、土鍋よりも粒感が薄くなり、若干やわらかめに炊き上がる。

炊きたては土鍋、冷めると炊飯器早炊きのほうが好み。

そして、アルミ鍋で炊くと、もちもち感が増してめちゃくちゃ好みになった。

以上

他に、山形県高畠町・安部政男さんの「山形95号」、福島県会津若松市・長谷川純一さんの「コシヒカリ」、秋田県湯沢市・渡部浩見さんの「ゆうだい21」などもおいしかった。

今回も、あくまで「おいしい」は私の好みであることを付け加える。おいしさは人それぞれ。