柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

大きな視点を持ちながら目の前の食卓を見る  

パンやパスタなど輸入小麦による主食の多様化によって日本の米食文化が揺らぐ中、私たちがこれからの日本の米食文化、これからの米農業を考える上で、大切にしたいことは何だろうか。

それを示唆してくれていると思うのが、首都圏を中心に国内43店舗、海外3店舗を展開するおむすび店「おむすび権米衛」。

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大きくて丸みを帯びたおむすびは温かみを感じる(おむすび権米衛提供)

運営している「株式会社イワイ」の岩井健次社長がおむすび店を始めたきっかけは「国防」だった。

岩井社長は、大手総合商社勤務時代、石油産出国であるサウジアラビアとの取引を担当。そして、現地で日本とサウジアラビアの食糧自給率がほぼ同じことを知った。緑豊かな日本と、砂漠だらけのサウジアラビア。石油危機を体験したからこそ、日本で起こり得る食糧危機に対して強い危機感を覚えたという。食糧の自給は、すなわち国防。米の消費を増やすことで農地を守ろうと起業した。今から25年前のことだ。

 

1つ1つ店内で作られた大きなおむすびには、日本の米農業への想いが込められている。売上目標はなく、あるのは米の消費目標。現在は1000トンで、目標は倍の2000トン。持続可能な稲作ができるよう、契約農家からは再生産可能価格で米を購入している。

私たちが、何をどう作るか、何をどう売るか、何をどう買うか、何をどう食べるか。その1つ1つはたとえ小さくても、いつかの日本の水田風景や私たちの食卓に大きく影響することを心に留めたい。

(日本農業新聞コラム「柏木智帆のライフワークはライスワーク」)