柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

モチなし正月

鏡餅をこしらえたときにお父ちゃんから余った餅をもらった。さっそく「つゆ餅」と「納豆餅」を作って食べた。

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納豆もち

これで来年1月15日まで餅は食べ納めらしい。なぜなら、福島県会津地方の嫁ぎ先では正月に餅を食べない。お雑煮は地方によってさまざまだと言うけど、「お雑煮」という存在がなかった。代わりにある似たような餅料理は「つゆ餅」といって、大根の千六本と細く切った油揚げを入れた醤油味の汁に餅を入れた料理。でも、これも正月には食べない。

 

嫁ぎ先では、田植え終了後の「さなぶり」や稲刈り終了後の「かっきり」、その他季節行事など、年間にわたってことあるごとに餅をつき、「ハレ=餅」のイメージがあるのに、お正月だけはなぜか餅を食べない。

 

不思議だなあと思って調べてみると、奥会津の「モチなし正月慣行」に関する論文を発見した。「モチに対して極めて強い禁忌を有している」家もあるそうだ。「日本全国お雑煮マップ」など地域のお雑煮をまとめたものもあるので、てっきり正月にはどの地域でも餅が入ったお雑煮を食べるものだと思い込んでいた(「お雑煮研究所」によると、徳島県北部の山間部では『餅なし雑煮』を食べるらしい)。

 

日本の食文化は地域ごとにまだまだ多様性が残っている。とは言え、「正月といえば餅」という食文化で過ごしてきたので、正月に餅を食べないのはちょっとさみしい。

 

私の実家では、東信州出身の母の文化と湘南出身の父の文化が混ざった正月料理だった。結婚は文化の融合。というわけで、元旦だけは餅入りの雑煮を作ることにした。東信州と湘南と会津の融合。家庭料理はそういうものだと思う。