柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

香りマツタケ、味シメジ?

9月、夫と松茸名人と一緒に山へ松茸採りに出かけた。歩いていると「松茸のにおいがする!」と夫。私にはまったくわからなかったが、採った松茸を腰かごに入れていると、まるで松茸の香水をつけたかのように、私から松茸の香りが放たれ続けていた。

帰宅して松茸ごはんを作ると、炊飯中から家の中が松茸の香りに満たされた。土鍋のふたを開けて顔面に松茸ミストを浴び、ひとくち食べると口の中が松茸の香りに溢れた。食べてからハーッと息を吐いたら松茸を食べたことがわかるのではないかというくらいに。

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「香りマツタケ、味シメジ」と言われているが、それは違うと確信した。たしかにしめじもおいしいが、松茸の旨みの濃いこと。

これはきっと松茸を入手できない人が自分を納得させるために作った言葉に違いない…と思うのは、私がその松茸を入手できない人だったから。今では松茸が手に入る環境に住んでいるが、東京に住んでいた頃はシメジやエノキのように気軽に松茸を買うことなんてできなかった。松茸なんて香りだけでしょ、シメジのがおいしいもんね、と言いたかったのだ。

ところが、シメジは100g 98円で売っているおなじみのシメジではなく、本シメジのことなのだとか。天然の本シメジを食べたことがないが、もしかしたら本当に「香りマツタケ、味シメジ」なのかもしれない。来年は本シメジごはんを食べて真相を確かめたい。

「お米は太る」と思い込んでいる人へ――ボディビ ル元チャンピオンがごはん食を指南! “⻩金バランス”は「炭水化物6:タンパク質2:脂肪2」

私は20代の頃、⻑きにわたって「摂食障害」だった。

「掘るほどに出てくるお米の魅力、まずは思いつくままに」 で書いた通り、 一切の食材や調味料を拒否しながらも、お米だけは安心感があって食べることが できるという期間もあった。

今ではいろいろなものが食べられるようになって外食も飲酒も楽しめるように なった。そんな私に友人・知人・見知らぬ方から時折相談やメッセージが寄せら れる。

「本当はお腹いっぱいごはんを食べたい」と言いながらも、お米を食べると太 るのではないかという恐怖にとらわれて一粒も食べられない友人。

数年前から摂食障害に悩み、「お米は大好きなのに『糖質は太る』という情報 が(頭に)こびりついてしまって」「恐怖心が勝ってしまって食べたいのに食べ られない」と言うフォロワーの方。

私の場合はお米は食べられたが、お米に限らず「ある特定の食べ物に対する恐 怖感」は経験的に痛いほどわかる。だからこそ、「お米を食べよう」と気安く押 し付けることはできない。

■「お米は太る」と思い込んでいる人は多い

ここまでいかずとも、ボディメイクやダイエットを目指す人の中に、「高タン パク質・低糖質」を心がけている人は多い。中には炭水化物の必要性を説く人も いるが、動画共有サイトやSNSなどでは、タンパク質を意識したボリュームのあ るおかずをとる一方でお米は少量に抑える人、運動しない日はなるべく炭水化物 をとらないという人、炭水化物は朝食だけしか食べない人、高タンパク質の食材 を入れたサラダしか食べない人、たっぷりの肉ともやしだけを食べる人など、 「糖質は太る」を象徴するような情報が溢れている。

たとえこれが常食されているものではなかったとしても、できるだけ炭水化物 を減らした食事を勧めるような情報に触れ続けているうちに、「糖質は太る」と いうイメージが視聴者・閲覧者の「頭にこびりつく」のも無理はない。

お米の消費が減り続けている要因の中には、人口減少、炊飯の手間のほか、 「パンが食べたい」「パスタが食べたい」「ラーメンが食べたい」など積極的な 小⻨食の選択も挙げられるが、こうした「太りたくないから」という理由で米食 を拒否する層は実感的に多い。

統計的にはどうだろうか。農林水産省が2020年に行った「米の消費動向に関 する調査」を見てみると、5年前よりも自身のお米の消費量が「減ってきてい る」と答えた人たち(28%)の理由(複数回答可)は、「副菜・おかずを食べる 量を増やし、主食を食べる量を減らしたから」(29%)が最も多く、次に多いの は「主食も副菜も含めて、食べる量を減らしたから」(28%)だった。

 一方で、同調査の「未来の子どもたちに食べさせたい理想的な主食」の問いに は、92%が「ご飯」と答えるなど、お米のイメージは断トツに良い。

ところが、2020年に行われた内閣府「食料・農業・農村の役割に関する世論 調査」では、「米を食べると太ると思うか」という問いに対して「そう思う」と 答えた人の割合は24年前の同調査に比べて2ポイント増加、「そうは思わない」 と答えた人の割合は29ポイント減少した。

やはり、「ごはんを食べる量を減らした人」「お米を食べると太ると思う人」 は少なからずいることがわかる。
 ごはんはしっかり食べておかずは控えめにそうした情報を否定して「摂取カロリーの6割がお米」という食事を推奨して いるのは、ダイエットからボディメイク、トレーニングまで、さまざまな“肉体 改造”のニーズをサポートする世界最大級のフィットネスクラブ「ゴールドジ ム」。オリジナルのプロテインなどを販売していることもあって「高タンパク質」の食事を推奨しているイメージを持たれがちだが、炭水化物、その中でもお 米を重視している。 「たとえ減量中であっても摂取カロリーの半分以上はお米を食べることをすす めています」と話すのは、同ジムのプロトレーナーでボディビル選手権チャンピ オン歴のある須藤高峰(すどう・たかね)さん。

ゴールドジムのプロトレーナー・須藤高峰さん。東京・関東・東日本各クラス別で優勝の経験があり、健康食育シニアマイスターも取得している

「新規に入会した会員さんにカウンセリングを行うと『健康のためにお米を抜 いている』という人が多く、⻑年トレーニングされている人でも自分で集めた情 報で『お米を食べないようにしている』という人もいます。そういう人は、集中 力が上がらなかったり、筋力が上がらなかったり、お通じがなかったりと、調子 が悪くなってしまいがちで、リバウンドもしやすい。だからこそ、お米への誤解 を解いて、適正量のお米をしっかり食べましょうと伝えています」

同ジムでは、会員向けのセミナーのほか、社員向けの研修制度「ゴールドジム アカデミー」で、こうした食事に関する指導をしている。須藤さんはセミナーや アカデミーの講師を務め、4年前からは「一般社団法人日本健康食育協会」の 「健康食育シニアマスター」を取得し、より一層お米の大切さを説き続けてき た。 同ジム推奨の “⻩金バランス”は摂取カロリーの目安が「炭水化物6:タンパク 質2:脂肪2」。

だが、食事ごとに栄養素の計算ができる人は滅多にいない。そこ で、ざっくり見た目でわかるように「ごはん6:おかず4」の割合を勧めている。

それもわかりづらい場合は、ごはんをしっかり食べておかずは控えめにするイ メージで食事をすると⻩金バランスに近くなる。 須藤さんのおすすめは「白飯と一汁一菜」だ。「お米と大豆製品を一緒に食べ るというのはタンパク質の質をどんどん上げてくれる」と聞くと、「ごはんと味 噌汁」を選んできた先人のすごさを思い知る。食事の用意が面倒なときは「白飯 と具だくさん味噌汁があれば完璧」だという。

毎食必ずごはん6の割合を守らずとも2〜3日間を全体的に見て「ごはん中心 だったな」と思えるように帳尻を合わせればいい。何よりも続けることが大事な のだと須藤さんは言う。
 ■ごはんを食べないと太る場合も

「炭水化物・糖質=太る」「筋肉=高タンパク質」というイメージが広がって いるが、実際は「材料(タンパク質)をいくらとっても、それを動かすエネル ギー(炭水化物・糖質)がなければ、筋力はつかない」と須藤さん。「炭水化物 の9割以上は筋肉と脳で使われ、脂肪に回るものはほとんどありませんが、運動 や炭水化物が不足していると、筋肉で糖を使えなくなるので太り始めてしまいま す」とも指摘する。
 須藤さんが炭水化物の中でもお米を勧める理由は、余計な調味料や油や添加物 などを含まず水だけで調理できるシンプルさに加え、粒食であること。粉食の小 ⻨製品に比べて咀嚼回数が多いことで、胃腸の働きが活発になって食べ物を消化 吸収する力である“胃腸力”が鍛えられるという。筋肉トレーニングしている人だ けでなく、食事をとるすべての人に関わってくる筋肉だ。

「胃腸の70%は筋肉で、咀嚼することがスイッチとなって動き始める。胃腸の 筋肉トレーニングに繋がって燃費も良くなり、胃腸力が高まって消化吸収力が良 くなれば腸内環境も良くなる。逆に、胃腸の筋肉を使わない欠食や断食、プロテ インやスムージーなどの流動食、早食いは胃腸力を弱めます」(須藤さん)。

同ジムでは各店にプロテインバーを設置しているが、「プロテインやサプリメ ントはあくまで補助食品。基本の日常食をお米中心の食事をしっかりとっている 人にだけおすすめしています」と須藤さん。プロテインやスムージー、サプリメ ントなどを食事に置き換えるなどもってのほかだそうだ。

「1日に必要なごはんの量は?」。愚問だと思いながらもあえて聞いてみた。 言わずもがな、個人差がある。すると、須藤さんは、まったくお米を食べない人 には「週1回から」、うどんが好きで1日1食は食べたいという人には「1日2回」というふうにそれぞれに合ったかたちでごはん食をすすめていき、「(個人差は ありながらも一般論として)最終的には小柄な女性でも1日2合、男性ならば1日 3合くらいのお米が食べられるような胃腸力を鍛える」ことを推奨していると答 えてくれた。

■20代はお米好きが多い?

 以上が須藤さんの見解だ。食は極めて個人的なことであり、それぞれ持論はあると思うが、自身や指導の経験や学びから出てくる言葉には説得力がある。 前述した内閣府の調査で5年前と比べて自身の米消費量が「増えてきた」と答 えた人の理由を見てみると、「お米が好きになったから・味が良くなったから」 (38%)が最も多く、次に多いのは「お米は食べごたえがあるから・腹もちがよ いから」(29%)。特に、18〜29歳の比較的若い世代は「お米が好きになった から」「お米が健康によいと感じたから」と回答する割合が高かった。
 同調査で5年前よりも自身のお米の消費量が「減ってきている」と答えた人の 中にも、私に連絡をくれた方たちのように「お米が好き」という人はきっといる はず。お米が食べられないという私の友人は「太らない体だったら白いごはんを 山盛り食べたい」と言っていた。須藤さんの話をきっかけに「お米が好きなのに 食べられない」という人たちからお米に対する恐怖心が少しでも取り除かれたら 嬉しい。

(朝日新聞web「論座」掲載)

おでんごはん

先日、おでんを作って2日間にわたって食べた。おでんは味がしみた2日目がおいしい。

学生時代にコンビニでバイトしていた友人から廃棄用おでんをもらって食べたことがある。作ってから数時間で廃棄の決まりがあるとかなんとか。コンビニおでんと家庭おでんは事情が違うんだろうな。

おでんを作ったとき楽しみにしているのが「おでんごはん」。おでんの残り汁でつくる炊き込みごはん。これがおいしい。

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こういった料理を作ると、いつも思い出すのは、故・向田邦子さん原作・脚本のテレビドラマ「寺内貫太郎一家」。一家のある日の朝食メニューに「精進揚げの煮付け(ゆうべの残り)」と書いてあるのを見つけて、なんというリアルな生活感だろうと感嘆するばかりであった。ちなみに夫は天ぷらよりも翌日の煮付けのほうが好きらしい。わかるなー

おでん汁の料理といえば、東京・代田橋にある立ち飲み屋「しゃけスタンド」。この店の「かけめし」は、ごはんの上に焼きジャケをのけてからおでん汁をかけた料理。しゃけスタンドに飲みにいくと必ず食べていた。オマージュとして、かけめしに使われていた白山陶器の平茶碗を購入。しかしながら、自分で作るとしゃけスタンドと比べてがっかりしそうなので一度も作れないまま今に至る。

おやつもお米を食べよう運動・その3

先日、娘と一緒に「さつまいも団子」作った。

いつも作りたいものがあるとネットで検索してレシピを探して…というタイプだけど、今回は思いつき。蒸して潰したさつまいもとだんご粉と水を合わせてこねてみると…良い感じのやわらかさになったので娘と一緒に丸く成形。

少しいびつになったけど上手にできた。

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自分で作った団子は食べずに私が作った団子ばかり食べる娘。食べ比べてみると、娘の団子はひらひら部分が水っぽい。形が味わいにも影響するんだなと学びになった。いつも小さな気づきをくれる娘に感謝。
今回使ったのは粉質のさつまいも。このままでも素朴な甘さでおいしいのに、娘は醤油とみりんと片栗粉と水で作ったみたらしあんにさつまいも団子をつけて食べていた。

次回は蜜芋系さつまいもでみたらしあんいらずのさつまいも団子を目指そうかな。

おやつをお米を食べよう運動・その2

娘と一緒に会津地方の郷土料理「しんごろうもち」を作った。
「もち」と言っても餅ではなく、うるち米を半殺しにした「もち」。

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小さいしんごろうもちは3歳の娘作。

「卵の大きさだよ」と作って見せてもお月見団子の印象が強いのか、お月見団子サイズのしんごろうもちを作っていた。

福島県鮫川村産の「じゅうねん(えごま)」を擦って味噌と甘酒で作った「じゅうねん味噌」を塗ってグリルで焼いて完成。

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もっと香ばしく焼きたかったけど串のほうが焼けそうだったのでこのくらいでストップ。次回は持ち手にアルミホイルを巻いてみようかな。f:id:chihoism0:20221006164116j:image

お米は宮城県産「ひとめぼれ」だけど、それこそ軟らかめの会津産「コシヒカリ」のほうが半殺しの作業が楽かも。

娘はゴマアレルギーだけど大丈夫かなと検索したら、エゴマはシソ科でありゴマとは違うのでゴマアレルギーでも食べられる…ということを知った。勉強になった。

なかなかボリューミーなのでおやつにするなら卵サイズ1個でじゅうぶんかな。

この日はたくさん作ったのでしんごろうもちランチに。とは言え、ランチにしては甘い。娘はしんごろうもちを食べた後におむすびも食べていた。その感覚わかる。

おやつもお米を食べよう運動・その1

9月10日の中秋の名月、3歳の娘と一緒にお月見団子を作った。

使ったのは、スーパーで売っている「だんご粉」。パッケージを見ると「うるち60%、もち40%」と書いてあった。うるち米を低アミロース品種にしたらこの配合割合は変わるのか興味深い。

娘はきっと団子の大きさがバラバラになったり、うまく丸が作れなかったりするのかなと思っていたら、意外に大きさがほぼ均一で丸が作れていた。しかも私よりも早い。

1年前の娘はそもそもこういう手作業にまったく興味を示さなかったことを思うと感慨深い。

お団子が蒸し上がると、娘が「たべたい」と言うのでまだ月が出ていないうちにお月見。月より団子。

娘は団子をたいそう気に入り、翌日の昼過ぎまでには300gのだんご粉で作った団子の多くが娘のお腹に消えた。

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「もっと」と言うので、だんご粉との食感の違いを確かめるために買ってあった上新粉(うるち100%)を100gだけ使って早急に団子をこしらえると、あっという間に団子が消えた。

このうるち米も低アミロース品種を使うと食感が変わるのか興味深い。

米粉を販売している生産者もいるが、低アミロース米粉を販売している生産者もいるのだろうか。いるとしたらなぜ低アミロース品種を選んだのか、使い方や食味にどう影響するのか聞いてみたい。そして、個人的には米粉だけでなくだんご粉も売ってほしい。

お団子作りがこんなに手軽だとは知らなかった。味醂と醤油と片栗粉と水でみたらしあんを作ると、子どものおやつにぴったり。そして子どもと一緒に団子作りを楽しめる。

米原理主義者の私は「おやつもお米を食べよう運動」の一環として、この団子作りを推奨してまいりたい。ちなみに、味醂を使ったみたらしあんは砂糖不使用。先日、砂糖の代わりに甘酒を使って作った「じゅうねんみそ(エゴマみそ)」をつけてもおいしかった。

娘は8月のお盆の墓参りでは団子を一つも食べなかったのに、調理に参加することで食べるようになるというのは興味深い。そういうおいしさを体感しているんだな。

ごはんが進む「残りもの部門」と「ちょいしみ部門」

先日スーパーで北海道産の生筋子を見つけた。

3歳の娘はいくらの醤油漬けが大好きなので、5,000円分の生筋子を購入して、季節行事のために小分けにしてして冷凍した。

瓶の蓋に「12月」「1月」「2月」「3月」…とラベルをつけて冷凍。クリスマス、大晦日、正月、節分、ひな祭り…と娘がいくらを食べられる機会は意外と多い。

もちろん冷凍保存だけでなく、すぐに食べるぶんは確保。娘は大喜びで食べ、すぐにいくらはなくなってしまった。

「いくら!もっと!」と駄々をこねる娘。

いくらを食べ終わった後の漬け汁もごはんにつけて食べていることを知っていたので、「もう汁しか残ってないの。これでもいい?」と聞くと、「うん!」。

小さな器にいくらの漬け汁を入れてあげると、その汁でごはんを食べていた。

翌日はのっけから「いくらじる!」と漬け汁を要求する娘。

いくらの漬け汁を出すと、汁だけでごはんを3杯も食べた。

娘はいくらそのものというよりは、いくらの醤油漬けの味が好きなのかもしれない。

たしかに白ごはんが進む。

娘はプチプチとした食感や弾けた卵から流れ出る強烈なうまみ…よりも、
「いくらのエキスがしみ出た漬け汁が好き」疑惑

ちなみに先日の土用丑の日は、茄子で“うなぎの蒲焼きもどき”を作った。

夫はベジタリアンなのでうなぎが食べられないし、茄子でどれほどうなぎ感が出るのか興味深かったが、見た目はたしかにうなぎっぽいと言えばうなぎっぽい。

茄子でつくったうなぎの蒲焼風。うなぎに見えるような見えないような。

とは言え、うなぎ特有の川魚っぽい風味や食感はもちろん違う。

ただ、粉山椒をかけてみると、まるでうなぎを食べているかのような錯覚に陥った瞬間が何度もあった。

うな重は好きで、また行きたい店が南千住と小田原と赤坂にあるが、うなぎを堪能することが目的ではなく、白ごはんをおいしく食べることが目的の場合は、おいしいタレと粉山椒さえあれば十分と言えば十分かも。

「いくら汁」と「うなぎのタレ」はれっきとしたごはんのおともなのだと確信した。

そういえば、池波正太郎氏がエッセイで、冬の夕飯に煮魚を食べた翌日の朝、鍋の中で固まった煮こごりをほかほかごはんにのせて、ごはんの温かさで煮こごりが溶け始めたところをごはんと一緒にかきこむ…という食べ方を紹介していた。そのエッセイを読んだ大学生の頃の私はあまりにもおいしそうな文章に耐えられなくなり、早速真似をしてみたことがあった。これもタレと言えばタレである。

汁やタレをおいしく食べるポイントは、おいしい白ごはん。汁やタレが残りものだからこそ、電子レンジでチンした冷凍ごはんやパックごはん、長時間保温で劣化したごはんではなく、炊きたてのごはんに合わせたい。そう考えると、汁やタレはごはんを主役に仕立てる、まさにごはんのおとも中のごはんのおともなのかもしれない。

新米の季節に必ずメディアに「ごはんのおとも特集」が登場するが、こうした「残りもの部門」「はずメシ部門(人には言いづらいちょっと恥ずかしいメシ部門)」があったらおもしろいと思うのだけど、どうだろう?

ちなみに私は味玉をおかずにごはんを食べるとき、味玉を切ってあらわれた卵黄に漬け汁をしみこませ、その際に味玉をごはんにのせて漬け汁がちょっとしみたごはんを食べるのも好きだ。ごはんのおともというよりは、ごはんのおかずではあるが、焼肉・オン・ザ・ライスでタレがついたごはんや、ヅケマグロ・オン・ザ・ライスでタレがついたごはんなど、白ごはんが進むごはんのおかずの「ちょいしみ部門」はめちゃくちゃ盛り上がるように思うのだけど、どうだろう?