柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

タイの残念なニュース

時事通信社の報道でショッキングなニュースを知った。

要約すると、こんな内容だ。

タイ商務省国内通商局のウドム副局長によると、タイ国内のコメ消費量は2018年の1人当たり年平均100キロから減少が続いている。

減少の要因は「食の多様化の進行」「若年層のファストフード消費増」「タイ人女性の間でご飯を食べると太るとの見方が広がった」など。

若年層のコメ消費量は1人当たり年72キロに減り、特にバンコク市民では約50キロにとどまっている。

タイでは米価維持のために、特に若年層を対象にコメ消費促進キャンペーンを展開していく。(2.21.デーリー・ニュース)

2018年、バンコクにあるカセサート大学でお米に詳しいウィーラシット・サンパモンコンチャイ教授にお話を伺った。教授は「ファストフードのチェーン店が増えてきている。私もピザは好きだが、週末しか食べない。タイ人たちは自分たちの国の料理が好き。お米の消費量は減ってない」とおっしゃっていた。まさにお話を伺ったこの年から米消費量が減少に転じたのだ。

タイのショッピングセンターの米売り場(2018年バンコクで撮影)

タイ人女性の間で「ご飯を食べると太る」という味方が広がった発端は何だろう。インターネットを通して日本の誤情報が広がってしまったのだとすれば、非常に残念だ。

日本国内だけでなくタイに向けても、「ご飯を食べると太る」は間違いである、と発信していきたいな。

それにしても、特にバンコクでお米の消費量が減っていることを思うと、経済発展していくとお米の消費は減るものなのだろうか。日本の高度経済成長も然り。

そういえば、タイ北部の農村部ではイサーン料理といって糯米が主食の文化があるが、機械化によって重労働から解放されていくほどにどっしり重たい食べ心地の糯米が嫌厭され、うるち米が常食になっていったというお話をサンパモンコンチャイ教授から伺った。

また、お米が自家用ではなく換金作物になるにつれ、農家は糯米よりも高値で売れるうるち米を作るようになり、彼らの日常食もうるち米に変わってきたともおっしゃっていた。

バンコクでもオフィスワーカーなどには水分が多くて満腹感のあるお米が嫌厭され、麺やパンなどの軽い食べ心地の主食に人気が移行しているのかもしれない。

経済発展とお米の消費量。きっと他の国でも相関があるのではないだろうか。