柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

日本のドルマ「いかめし」

スーパーの魚売り場で一番大きないかを選んで、「いかめし」を作った。

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いかは福島県いわき市で水揚げされた、いわゆる「常磐もの」。お米は福島県・猪苗代町、つちや農園の「ヒメノモチ」。
改めて感じたのは、いかめしの可愛さ。どう考えても可愛い。ぷくっと膨らんだ頭の中に、なんと餅米が詰まっているという衝撃。この料理を考えた人を称賛したい。

いかめしは「甘い」「手間がかかる」というイメージがあったけど、糯米を前日から浸漬させておけば意外と簡単だし、甘さ控えめのさっぱりとしたいかめしを作ることもできる。ぜひご家庭で作ってみてはどうだろう。ゲソは一緒に煮てもいいし、肝焼きにしてもいい。
食後に車に乗らねばならなかったので、日本酒が飲めず残念だったが、「日本酒×いかめし」「日本酒×いなりずし」というふうに「日本酒×日本のドルマ」は相性抜群だと思う。

ドルマ(ドルマス)は、野菜や貝などにピラフなどを詰めた料理のこと。

以前にトルコやヨルダンでビベルドルマス(ピーマン)やヤプラックドルマス(ぶどうの葉)やミディエドルマス(ムール貝)を食べたときから「いかめしといなりずしは日本のドルマだ!」と感じていた。

海外の人に日本のドルマを知ってほしいし、海外の人のように日本でドルマとお酒をペアリングする楽しみ方が広まったら楽しいな。

「おねば」の厚い納豆

大阪市中央区「らくだ坂納豆工房」の「谷町納豆」をお取り寄せ。

マコモの藁に住んでいる天然の納豆菌で発酵させているそうで、大豆の味が濃く、硬すぎずやわらかすぎない絶妙な歯触り。噛むごとに大豆の甘さを感じる。大粒で食べ応え抜群。

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特筆すべきは、納豆の「おねば」。

ごはんの粒の表面の保水膜は「おねば」と言うが、納豆の粒の表面のぬらり感は何と呼ぶのだろう。

ひとまず、それも「おねば」と呼ぶことにするが、ひとくち食べると大豆の「おねば」に口の中が占拠される。とにかく大豆の「おねば」がすごい。ごはんの保水膜を測る数値を「味度値」と呼ぶが、これは納豆味度値高得点間違いなし。

納豆は大好きで毎日食べているけど、こんなにも「納豆を食べた感」が強い納豆はなかなかない。それでいて、クセが強いわけではなく、食べやすい。

ちなみに、大豆は北海道・上川町「辰巳農園」の「とよまどか」。マコモ藁は大阪府寝屋川市「アオゾラ農園」。
合わせるお米は、粒の輪郭がはっきりしたお米が好みだけど、もちもちした低アミロース米でごはんのもわもわと納豆のおねばのもわもわが渾然一体となった状態もおいしそう。でもやっぱり粒しゃっきりが好き。記憶に残る納豆!

ラジオ体操には「プラスお米」

10月9日は「スポーツの日」。と言ってもスポーツをする日課がなく、運動不足を反省して自宅で動画を見ながら軽い筋トレを続けている。

出産して間もなかった数年前、新型コロナウイルス禍と大雪で外に出づらく、帝王切開の傷のせいで腹筋を使うこともできなかった時には、動画を見ながらのラジオ体操を日課にしていた。

■時代を超えて親しまれてきたラジオ体操

自宅でのラジオ体操を提案してくれたのは、以前からラジオ体操の素晴らしさを説いてくれていた友人だ。最近になってNPO法人「全国ラジオ体操連盟」の「1級ラジオ体操指導士」にも認定されたそうで、ラジオ体操の普及にますます力を入れている。

ラジオ体操は小・中学校で何度もやらされていたので、あの音楽を聴くと、自然と体が動くという人は私だけではないだろう。小学生の夏休み、早朝から近所の公園でラジオ体操に参加してスタンプをもらった思い出があるという人も多いのではないだろうか。

ラジオ体操の「分け隔て無さ」を感じたのは、新聞記者になって簡易宿泊街の横浜市・寿地区を取材していたとき。車椅子の人も、椅子に座ったままの人も、ラジオ体操に参加できることを知り、小さな感動を覚えた。今でもNHK「テレビ体操」の動画を流して娘と一緒にラジオ体操をするたび、椅子に座ったまま体操する出演者を見ては、寿地区での情景が目に浮かぶ。

ラジオ体操は、1928年に「かんぽ生命」前身の逓信省(現総務省)簡易保険局が「国民の健康増進」のために制定した「国民保険体操」が起源らしい。たしかに、適度に心拍数が上がり、全身を使った運動であることが実感でき、老若男女の「健康増進」に有効そうだなと感じる。

■子どもの血液検査をする先進的な県も

だが、食の欧米化や主食の多様化が進む現代では、食を抜きにして健康の保持・増進を果たすことは不可能だ。

特に現代の子どもたちは生まれた時からパンやパスタやラーメンなど多様な主食が食べられる時代を生き、清涼飲料水や砂糖(異性化糖)・油脂の多い加工食品などを手軽に買える時代を生きている。その結果、全国的に子どもの肥満が増え、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病が問題となっている。

人口あたりの糖尿病による死亡率ワースト上位の香川県では、子どものころから生活習慣病を予防しようと、2012年度から県内の小学4年生と中学1年生を対象に「小児生活習慣病予防検診」を毎年実施して、血液検査などを行なっている。

県がまとめた令和4年度(2022年度)の調査結果によると、総コレステロールや中性脂肪などが基準値を超える「脂質異常」が見られた割合は、小学4年生の男子が11.4%、女子が10.0%で、中学1年生は男子が7.5%、女子が10.1%と、小中学生ともに1割前後の子どもに「脂質異常」に陥っていることがわかった。

全国的に標準体重よりも20%重たい「肥満傾向」の子どもの割合が高止まりしている傾向を鑑みれば、「脂質異常」の子どもがいるのは香川県だけではないはずだ。

こうした時代になってもなお、教育の一環であるはずの学校給食で揚げパンを主食にした献立やラーメンを主食にした献立などが各地で提供されている。全国の自治体でも香川県の先進的な取り組みを導入して、現状を知り、危機感を持ってほしい。「食べること」は子どもの健康や寿命に関わる重要な営みであることを、どうか為政者や自治体職員には特に思い知ってほしい。

■「朝ごはん」は何でもいいのか?

文部科学省は「幼児期からの基本的生活習慣の確立」を目指して、2006年から「早寝早起き朝ごはん」全国協議会を設立して、「子どもの生活リズム向上プロジェクト」事業を展開している。「早寝 早起き 朝ごはん」というキャッチフレーズを見たり聞いたりしたことがある人もいるだろう。

同全国協議会によると、朝食欠食は「肥満や脂質異常症の原因の一つ」になることや、「肥満、脂質以上症等の生活習慣病の発症を助長」することにもつながるという。一方で、「朝ごはん」の内容についての言及には消極的で、どんな「朝ごはん」を理想としているのかが見えづらい。「ごはん」という言葉は「お米」だけに使われているわけではなく、「朝ごはんにパンを食べる」というふうに「食事」という意味合いでも使われている。

たとえ朝食をとったとしても、たとえば砂糖・油脂の多い菓子パンや砂糖入りのシリアルなどでは、健康的な食事とは思えない。朝食をとったか否かということばかりを重視するのは本質的ではなく、朝から砂糖や異性化糖、油脂類を過剰に摂取するのは避けるべきだろう。

パンは砂糖や油脂類などが含まれている場合が多い。たとえ、小麦粉と塩と水と酵母だけで作られた素朴なパンであっても、パンに塗るバター、サラダのドレッシング、油を使ったソテーなど、食事全体で見るとどうしても油が多くなりがちだ。ごはんに比べて水分が少ないパンは、油がないと飲み込みづらい。実際に「パンに合うおかず、朝食」のキーワードで検索すると、油や乳製品などを使ったレシピばかりが登場する。

一方で、ごはんを主食にした朝食ならば、納豆や焼き魚など朝から砂糖や油脂類を過剰に摂取するリスクは少ない。

農林水産省では朝の米飯食をすすめる「めざましごはん」キャンペーンを展開しているが、キャンペーンサイト内の「ごはんにぴったりレシピ」の中から一番調理時間が短い「5分以内」のレシピを見ると、朝から作るのはハードルが高いと感じるものが多い。

忙しい朝にあれこれおかずを用意しようとすると負担になるので、「ごはんと味噌汁があれば十分」「なんなら、おむすびだけでいい」くらいの気持ちで毎日の朝食を楽しんではどうだろう。

 

■「ラジオ体操×お米」を日常に

ラジオ体操に話を戻そう。

動画やラジオやテレビを使って自宅で気軽にできるラジオ体操は、屋内でも狭いスペースでもでき、生活に取り入れやすい利点がある。だが、私たちは軽い運動だけでは「健康増進」が望めない時代を生きている。そこで、ラジオ体操を習慣化すると同時に、お米を主食にした朝ごはんも習慣化することを意識してみてはどうだろう。

出勤前など食事の準備が大変な場合もあると思うが、たとえば納豆ごはんやおむすびなど、できるだけ手軽に作れるごはんならば続けやすい。事情があってコンビニ飯という人もいるだろうし、経済的に厳しい家庭もあると思うが、コンビニにはおむすびも売っているし、お米は茶碗一杯に換算すると比較的手軽な価格だ。そして何よりも運動した後のごはんはおいしい。

特に小中学校には、体育の授業で行うラジオ体操だけでなく、お米を中心とした和食を学校給食で提供することをぜひ検討してもらいたい。「健康増進」のためには「運動」だけでなく「食」がますます重要な時代になっている。

ちなみに、「ラジオ体操=軍国主義」と考える人もいるが、当時のラジオ体操はなくなり、現在のラジオ体操は戦後に「国から」ではなく「人々から」の要望を受けて生まれた3代目のラジオ体操らしい。軍国主義を彷彿とさせるからといってラジオ体操を活用しないのはもったいないように思う。

しらすどん

図書館で娘に「しらすどん」(最勝寺朋子 作・絵)という絵本を借りた。

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最近娘がしらすごはんが大好きで毎日釜揚げしらすをスーパーで買っている。朝晩必ずしらすごはんを食べるので80gパックが1日でなくなる。
絵本と現実世界がリンクすると楽しいと思って借りたのだが、前半の展開が怖すぎる。読み聞かせながら、思わず「えっ…」と目を疑った。
後半を読んでいくと、小さなしらすの1匹1匹が命であるということが伝わってくれるんじゃないかな。しらすひと口で大人数ならぬ大魚数を食べているということがなかなか言葉では伝わりづらいだけに、絵本って本当にすごいなと改めてしみじみ。
そして、お米も一粒一粒がタネであり命なんだよな。そう考えると、しらすどんにはものすごい数の命が集結している。

お米と海苔のご縁

知り合いの方が「お米の保存には海苔保存袋がおすすめ!」と言って、山本山の海苔保存袋をごっそりとくださった。

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使ってみると丈夫で厚みがあるので空気を抜きやすい。お米が酸化しづらくて良いかも。
アルミ袋のメリットについて検索してみると、防湿性・遮光性・バリア性・保香性などが挙げられていた。
普段ジッパー付きビニール袋を使ってお米を保存している人は海苔保存袋を試してみてはどうでしょう。

ただし、お米を食べ終えた後にそのまま新しいお米を入れるのはNG。なぜならば、袋の内側に付いた肌糠が酸化してしまうから。

乾いた布やキッチンペーパーなどで、お米の肌糠をきれいに取り除いてから、新しいお米を入れると何度も使えそう。

お米と海苔は相性が良いけど、まさか海苔の保存袋がお米の保存にも使えるとは。お米と海苔のご縁を感じる。

料理やコタツに「どっこんすい」

先日、「どっこんすい」という言葉を初めて聞いた。

福島県の猪苗代湖北岸では、かつて「どっこんすい」という言葉が使われていたらしい。

調べてみると、各地で使われている「どっこんすい」とは「湧き水」のこと。

だが、この界隈で言う「どっこんすい」は「湧き水」といっても、温室効果ガスとして知られる「メタン」を主成分とする天然ガスを含んだ水を指すようだ。

戦前はまだ家庭の台所にプロパンガスが普及されていなかったので、近所の人たちは山で柴刈りをしていた。湖畔では掘抜き井戸から出る「どっこんすい」から放出されるメタンに火をつけて、煮炊きに使っていたそうだ。

というわけで、夫が湖畔に住む40代の友人Sさんに「どっこんすい」について聞いてくれた。さすがにSさんは知らなかったようだが、Sさんの74歳の父親が知っていた。

飲み水のために掘った井戸から「どっこんすい」が湧いてきたので、井戸にふたをして「どっこんすい」から出るガスを貯めて、井戸の上にパイプのようなものを通してコタツで暖をとるために使っていた。Sさんパパはコタツに入っていた記憶があるそうだ。ちなみに、井戸の水は変なにおいがするわけでもなく飲めたらしい。

この井戸があった場所には、現在は国道49号線が通っている。

「どっこんすい」は、夫が田んぼの割れ目から変なにおいがしたことをきっかけに調べて判明した。間断灌水管理や中干し延長をすることで田んぼから放出される温室効果ガスのメタンを抑えることができるそうだが、猪苗代湖に繁茂した湿性植物の遺体が堆積してできたスクボ(泥炭土の方言)は例外のようだ。

スクボは加湿によって分解を免れて厚く体積して生まれた土壌で、この下層には有機物が微生物に分解されて生まれたメタンが眠っている。

だが、中干ししすぎて田んぼに割れ目ができると、メタンが上がってきてしまうと推測される。

地域ごと、田んぼごと、気候ごとに稲作の正解は違うからこそ、稲作は知識、経験則、観察眼、さらに地域の歴史や地形や土壌などを知ることが求められるんだな。

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水道から冷水が出ない9月

今年は残暑が厳しい。9月中旬を過ぎてもなかなか気温が下がらない。

早場米が8月から出回り、少しずつ新米が出てきているけど、気温が下がらないので水道水の温度がなかなか下がらない。私が住んでいるのは標高500メートル以上の町だというのに、昼間は水温23度もあったりする。平地だともっと高いだろうな。

お米を洗うときと浸漬するときは冷水を使うよがベストだけど、冷水が水道の蛇口から出てこない。そこで、冷水を冷蔵庫で作っておく必要がある。

ただ、冷蔵庫に水を入れて冷やすと11度弱くらいまでしか下がらない。冬場のような冷たい水を使いたい場合は、水に氷を入れておき、溶けてできた冷水を使うと良いよ、と以前にF師匠が教えてくれた。

浸漬時に氷を入れて、浸漬しながら氷を溶かすと吸水ムラができてしまうのでおすすめしない。まして、氷を入れて炊飯は炊きムラができてしまうので、もっとおすすめしない。

冬場は何もしなくても水道から0度、時にはマイナス温度の水が出てくる。お米を洗うと手が痛いけど、お米がおいしくなるならばなんなその。寒いのは苦手だけど、お米の吸水に最適な水温を与えてくれる天然の冷蔵庫に感謝。

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