柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

シャケとマシュ

焼き鮭が好きなのでスーパーでいつも塩鮭を買おうとするが、どれも原材料に酸化防止剤とかpH調整剤など、鮭と塩以外のものが使われている塩鮭ばかりなので買わずに店を出る。塩鮭は酸化防止剤やpH調整剤がないと成り立たないものなのだろうかと絶望していたら、塩鮭の近くに「塩鱒(しおマス)」を見つけた。

鱒は鮭よりも赤みが薄いピンク色の身なので、見た目は鮭っぽい。原材料を見ると、鱒と塩だけというシンプルさ。迷わず購入して2歳の娘のお弁当のおかずにした。

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お弁当を完食して帰宅した娘は鱒とは知らずに「おいしかったね、サケ」と言っていた。

私も娘のお弁当作りで余った焼き塩鱒を昼食で食べたのだが、鮭よりも脂が少なくさっぱりとしていながらも、パサパサしているわけでもなく、しっとりとした身でおいしかった。

そういえば実家に住んでいた頃、信州出身の母は帰省するとスーパーで塩鱒を買ってきて、自宅で焼いてくれていた。しかし、実家周辺のスーパーで鱒はなかなか見かけない。

鮭に似た見た目で味も良いのに、なぜ鱒はどちらかというとマイナー魚なのだろう。鱒は、スーパーの魚コーナーで一番面積の広い鮭の売り場の一角に数点置いてあるだけだった。

単純に流通量の違いという理由は置いておいて、たしかに切り身の形は鱒よりも鮭のほうがかわいい。

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あと、鮭がズルいのは「しゃけ」の呼び名だ。なぜ鮭は「しゃけ」と呼ばれているんだろう。

東京・代田橋に「しゃけスタンド」という、おいしいしゃけが食べられる立ち飲み屋があり、都内に住んでいた時は何度か飲みに行っていた。佇まいや料理など、グッとくるポイントが満載のお店なのだけど、やはり「しゃけスタンド」という名前のつかみは大きい。しゃけ定食が食べられる隣の店「しゃけ小島」も名前のつかみは大きい(以前に飲みに行ったとき、茄子の甘味噌焼きがおいしすぎて「なす小島」と呼びたくなった)。

ならば、鱒も「ましゅ」と呼べばいいかと言えば、残念ながら、当然ながら、そういうわけでもない。そして、「ますスタンド」「マス小島」と言われてもしっくり来ない。

焼き塩鱒のおいしさを噛みしめながらも、近所のスーパーの塩鮭の添加物が気になりながらも、やはり鮭は偉大だと認めざるを得ない。