柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

「胚芽米」は胚芽があっても芽が出ない

お米を精米すると「米ぬか」が出る。

白米の上に米ぬか部分の「ぬか層」がある状態は「玄米」。

その玄米を殻で覆った状態が「もみ」。

この玄米を覆っている殻は「もみ殻」。

もみ殻は一番表側(外側)の皮なので、「表皮」とも呼ばれる。

そして、ぬか層はいくつかの細かい層で構成されている。

外側から内側に向かって、「種皮(しゅひ)」、「果皮(かひ)」、「糊粉層(こふんそう)」(アリューロン層)と分かれ、極薄な服を重ね着している状態だ。

糊粉層の下の層は、「亜糊粉層(あこふんそう)」(サブアリューロン層)で、栄養と旨味が多いことから「うまみ層」と呼ばれている。亜糊粉層の下が一般的な白米の部分にあたる「胚乳」。白米でも亜糊粉層を残して精米したお米もあれば、亜糊粉層を削ってしまうお米もある。

糊粉層は「肌ぬか」とも呼ばれていて、研ぐ必要がないと言われる手軽な「無洗米」はこの肌ぬかを除去したお米のこと。

食べやすさと栄養価アップを目的として生まれた「胚芽米」は、肌ぬかを含めたぬか層を除去しながらも、「胚芽」を残したお米のこと。簡単に言えば、“胚芽付き白米”だ。

胚芽はお米の芽が出る部分で、玄米は胚芽が残っているので発芽するが、胚芽が残っている胚芽米は玄米のように発芽することはない。

その理由は、胚芽米で除去されてしまう糊粉層は、お米が発芽するときに胚乳の貯蔵物質を溶かす酵素を出す重要な場所だから。糊粉層にこんな役割があったとは。お米って本当におもしろい。

 

こうしたお米にまつわるアレコレを書いた拙著が5月19日に発売予定(胚芽米は芽が出ない件については書いていません)。普段何気なく食べてきたお米の見方・考え方が変わるきっかけになれば嬉しいです。

「知れば知るほどおもしろい お米のはなし」(三笠書房 知的生き方文庫)

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