柏木智帆のお米ときどきなんちゃら

元新聞記者のお米ライターが綴る、お米(ときどきお酒やごはん周り)のあれこれ

山田さんのおばちゃんちの麦茶

妊娠してからはカフェインを避けるために、コーヒー、紅茶、緑茶、ほうじ茶などをなるべく飲まないようにしている。

 

カフェインは食べもので摂取した鉄分を排出してしまうらしい。「気にしすぎでは?」と思う人もいるかもしれないけど、もともと鉄欠乏性貧血でもあり、昔は赤血球や白血球や血小板などあらゆるものが不足していたので、少しでも鉄分を保持しなくては…と思うと、やはりカフェインはできるだけ避けたい。

 

というわけで、自宅では、水、白湯、麦茶。カフェでは、ストレートジュース、ルイボスティー、カフェインレスコーヒーなどを飲んでいる。

 

麦茶を飲むと、いつも子どもの頃の夏の空気感がよみがえってくる。テレビでは「ミネラールむーぎーちゃ♪」のCMが流れ、家の冷蔵庫にはいつも作り置きの麦茶が入っていた。

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山田さんのおばちゃんちの麦茶はいつもキンキンに冷えていた

7月に入ると、小学校の下校時はいつも汗でびしょびしょだった。当時は、今の子どものように水筒を持たされていない。下校前に学校の水道で水をたらふく飲んでから帰宅しても、家に着くころにはのどがカラカラ。そんなとき、家まであと1分ほどだというのに、いつも立ち寄る場所があった。

 

それが「山田さんのおばちゃんち」。今のような小心者の私では考えられないことだけど、「おばちゃーん、のどかわいたー、むぎちゃちょうだーい」といつも開けっぱなしの山田さんちの玄関から大声でさけび、キンキンに冷えた麦茶を1、2杯もらって飲んでから、家に帰っていた。

 

大人になってから、普段はビールよりも日本酒が好きなのに、夏になるとキンキンに冷えたビールが飲みたくなるのは、子ども時代の麦茶の延長線にあるのではなかろうか…と思っている。同じ麦だし。

 

妊娠して食事の制限が出たり、食嗜好が変わったりすることで、新しい発見があったり、世界が広がったりしているなあと感じていたけど、よくよく考えると、こうしてふと昔食べたり飲んだりしたものを思い出す機会も増えているような気がする。

 

子どものころに食べたものの香りや味やエピソードから、時代や地域性を感じたり、親や隣近所の人の愛情を感じたり、あのころの空気感を思い起こしたり。好きだったものも苦手だったものも含めて、今にして思えば懐かしくて愛おしい。子どものころの食体験の大事さをつくづく感じる。